「アルマ」の製造を担った人たちは、無謀なまでの天文学者の要求に応え、神経を研ぎ澄ませ、知恵をふりしぼり、放り出したいという欲求に耐え、コンピュータの計算に明け暮れ、油と金属粉にまみれながら努力を続けた。彼らは、日本の「モノつくり」のヒーローと呼ぶにふさわしい人ばかりだった。しかも、マスコミに一度も登場したことのない人たち……。

厳しく、辛い物語の先に

 日本の「モノつくり」の凋落が語られることが多くなった。だが、「アルマ」は、日本には、とてつもなく高いハードルという課題さえあれば、人類未到の「モノつくり」をなしとげる底力を発揮できる数多くの人々がまだまだ数多く存在することを確信させてくれた。それも、オールド世代のみならず、若い世代が少なくないことも。

 『スーパー望遠鏡「アルマ」の創造者たち』は、そういう「モノつくり」の現場の人々とともに、日本の天文学者たちが欧米を相手に血ヘドを吐くような、そしてしたたかな経験を積み重ねてきたマネージメントの記録でもある。「アルマ」は、過去最大と言われた国際共同科学プロジェクトだけに、あらゆるビジネス分野の方々に知ってほしい教訓も多いのである。

 「アルマ」は、およそ30年におよぶ巨大プロジェクトだけに、執筆のために参照した資料だけでも数千ページにおよび、とてもではないが私一人の力ではすべて描くことはできなかった。しかし、拙著を通じて、宇宙・天文分野を超えて、壮大な計画に挑むすばらしさ、その苦しみと喜び、国際化時代の日本ならではの「日本力」とは何かを知っていただければと願っている。

7月31日発売の山根一眞著『<a target="_blank" href="https://www.amazon.co.jp/gp/product/486443042X/ref=as_li_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=486443042X&linkCode=as2&tag=nb5min-22&linkId=b142a3d2908cb19112c963db8193c067">スーパー望遠鏡「アルマ」の創造者たち</a>』(日経BPコンサルティング刊。四六判、カラーグラビア16ページを含め全280ページ、税別1500円)
7月31日発売の山根一眞著『スーパー望遠鏡「アルマ」の創造者たち』(日経BPコンサルティング刊。四六判、カラーグラビア16ページを含め全280ページ、税別1500円)

 『スーパー望遠鏡「アルマ」の創造者たち』の刊行を記念して8月2日に東京の八重洲ブックセンターで山根一眞の「アルマ」講演とサイン会があります。

 開場は18:30ですが事前申し込みが必要ですのご希望の方は早めにお申し込みを。

 当日は、本書に登場する「アルマ」の巨大アンテナの、加工途上のパラボラ面の一部(鏡面パネル)の現物など、モノつくり現場から提供していだいた「現物」も持参し披露します。また、国立天文台の「アルマ」天文学者も来てくれる予定ですので、壮大な宇宙を見る眼を作りあげてくれたことを感謝しつつ、皆さんにご紹介したいと思っています。

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