HTC NIPPON VR Business Unitディレクターの西川美優氏
HTC NIPPON VR Business Unitディレクターの西川美優氏
[画像のクリックで拡大表示]

 「2017年になって、製造業や建設業などのビジネス分野でのVR活用事例が増え、国内出荷台数は順調に伸びている」――。そう話すのは、HTC NIPPONでVR Business Unitのディレクターを務める西川美優氏だ。

 2016年7月に国内発売を開始した台湾HTCのヘッドマウントディスプレイ(HMD)「VIVE」。PCに接続されたHMD、両手に持つ触覚コントローラ、HMDの空間位置を検出する赤外線センサーなどをセットにしたVRシステムで、3×4mの範囲を歩き回りながらVR空間を体験できるのがウリだ。最新版のVIVEではヘッドフォンを内蔵した新HMDを2017年6月から発売。装着性が格段に向上している。

 2016年は家庭用ゲーム機やスマホを装着するタイプのHMDの新製品が次々と誕生し、注目を集めた年。VIVE発売当初もゲームや360度動画の再生端末としての利用がほとんどで、エンタテインメント向け機器として捉えられてきた。

 しかし、2017年以降、その潮目が変わってきたと西川氏は話す。「企業内での研究開発チームで試しに使ってみた、というレベルから、設計現場から営業まで含めてビジネスで活用したいというニーズに落とし込まれてきた」という。

 ただ、勝手に利用用途が広がってきたわけではない。VIVEへVR映像を出力するBtoB向けソフトウエアは必要だし、それらを組み上げてユーザーの課題を解決するシステムやソリューションをシステム・インテグレータなどが作り上げなければならない。アミューズメント施設での利用など実績が出てきたことで、VIVEの周辺にはそうしたパートナーが集まってきている。

 例えば、CADソフト大手の仏Dassault Systemes社は、多くのメーカーをクライアントに持つ3D CAD「CATIA」の最新版で、VIVEに直接出力できる機能を2017年1月に追加したと発表。また、CADソフト大手の米Autodesk社は製造業向け3Dビジュアライゼーションソフト「VRED」の表示デバイスとしてVIVEを新しくサポートした他、建設系CADメーカーの福井コンピュータはVIVEに対応した土木施工向けの3次元システムの新製品「TREND-CORE VR」(http://const.fukuicompu.co.jp/)を2017年夏に発売を開始すると発表している。

 このほか、CADとの橋渡しをするビジュアルツールを開発する企業も続々と出てきている。米DVERSE社が開発した「SYMMETRY」も、そうした特性を生かしたVRソフトの一つ。米Trimbleの建設3次元CAD「SketchUp」のモデルデータを読み込み、建物の中に入っているように表示できる。2017年2月から、VIVEで3Dモデルを表示するためのビューワーソフト「SYMMETRY alpha」を無料で公開している。

 「工場のラインを設計するシミュレーションにVIVEを使ったり、工作機器のメンテナンス性を向上させるために手が届くかどうかといった“実寸で知りたい”というニーズに対応するシステム開発なども進んでいる」と西川氏は話す。CADとの連携によって、図面と実物(プロトタイプ)の間にあるギャップを埋めるためのツールとして、エンタテインメント業界生まれのVRシステムがBtoBソリューションへ変貌してきたと言える。

 こうした製造業に向けたVR活用事例を知るカンファレンス型イベント「Japan VR Summit Nagoya 2017」が5月30日(火)から2日間、名古屋国際会議場(名古屋市)で開催する。HTC西川氏は同イベント内で、「国内外の製造業におけるHTC VIVEの活用事例紹介」というテーマで講演(無料)するほか、同社ブースではVIVEを使ったデモンストレーションも体験できる。