中国Lenovo社の大和研究所 は、Sn-Bi系の低温はんだを使えるリフロープロセス(以下、低温はんだプロセス)開発し、実用化した(プレスリリース関連記事)。Sn-Bi系の低温はんだは、Pbを含まずに低温でリフローできるという利点がある半面、接続信頼性が低くなりやすいという課題があり、これまでは実用化に至っていなかった。今回の低温はんだプロセスではリフローの最高温度を、従来のPbフリーはんだ(Sn-Ag-Cuはんだ)に比べて約70℃低い180℃にできるため、リフロー炉の電気代などの実装コストを下げられるとする。接続信頼性は同社で「ThinkPadレベル」と定める基準を満たすと確認し、ノートパソコンの量産品に適応した。このノートパソコンは、2016年12月から出荷している。同社は今回のプロセスに関して、フラックスやリフロー温度プロファイル、ステンシルや治具などのデザインといった、実装時の最適条件をまとめた。これらの条件を2018年秋から公開していく予定とする。

Lenovo社 レノボ大和研究所が開発した低温はんだプロセスを適用した「ThinkPad X1 Carbon」のメイン基板。レノボ大和研究所には、ThinkPadの開発などに向けて400人近くの技術者が所属するという。(写真:レノボ・ジャパン)
Lenovo社 レノボ大和研究所が開発した低温はんだプロセスを適用した「ThinkPad X1 Carbon」のメイン基板。レノボ大和研究所には、ThinkPadの開発などに向けて400人近くの技術者が所属するという。(写真:レノボ・ジャパン)
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 Sn-Bi系はんだには「Biが少ないと低温で接合できず、多いと接合強度が下がる」(レノボ・ジャパン SESM, Think ECAT技術 部長 小菅正氏)という弱点があった。さらに、はんだを溶融する際、もろくなりやすいBiが一部に凝集してクラックの原因になってしまうという課題もある。Lenovo社では、大手はんだメーカー2社の協力を得て、Biを拡散させる添加剤、フラックス、リフロー温度プロファイルの最適な組み合わせを探し出し、その条件に合う基板設計手法やステンシル、治具を開発した。現在特許申請中のため詳細は明らかにしていないが、各素材は既存品と同じものを使いながら、素材の組み合わせや利用方法を工夫することで、目的を達成したとする。なお、リフロー炉も既存品を使えるため、新たな設備投資は不要だという。

従来方法による低温はんだでの実装例(左写真、Standard LTS)と今回開発した「低温はんだプロセス」での実装例(右写真、New LTS)の電子顕微鏡写真の比較。白っぽく見えるのがBi(ビスマス)部分。左写真では隅にBiが凝集しているが、右写真では拡散していることが分かる。(写真:レノボ・ジャパン)
従来方法による低温はんだでの実装例(左写真、Standard LTS)と今回開発した「低温はんだプロセス」での実装例(右写真、New LTS)の電子顕微鏡写真の比較。白っぽく見えるのがBi(ビスマス)部分。左写真では隅にBiが凝集しているが、右写真では拡散していることが分かる。(写真:レノボ・ジャパン)
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