ボディー製造を専門に行う“コーチビルダー”という業態に起源を持ち、長い歴史と伝統に裏打ちをされた「ジャガー」。

 一方で、かつて存在した、フルライン自動車メーカー、Rover社が生産した軍用4WD車にブランド名の端を発し、現在はJaguar Land Roverグループと“一心同体”と言えるまでの関係にあるのが「ランドローバー」。

 今では不可分な関係でありつつも、前者は高級セダンやスポーツカー、後者は4輪駆動(4WD)のオフローダーを得意とし、その作品は完璧とも思える棲み分けが行われて来た。「オンロードのジャガーにオフロードのランドローバー」――ざっくり言えば、そんなフレーズで紹介できるのがこの両ブランドでもあったものだ。

レンジローバー「イヴォークコンバーチブル」とジャガー「F-PACE」
レンジローバー「イヴォークコンバーチブル」とジャガー「F-PACE」
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 ところがこのところ、その“境目”がちょっとばかり曖昧になってきた。ジャガーから、このブランド初のSUV(スポーツ・ユーティリティー・ビークル)である「F-PACE」がローンチをされたからだ。

 かつて国際試乗会へと出席の折、ディナーで同席したジャガーのデザインディレクターであるイアン・カラム氏に、「SUVが流行りですけれど、ジャガーはSUVに興味はないんですか?」と、半ば冗談交じりの質問をしたことがある。

 氏の口から返って来たのは、「ウチにはランドローバーがあるからね」という言葉。ジャガーはオンロード専門で、”泥臭い”方はランドローバーが担当する――そのフレーズには、そうした不文律が存在するニュアンスが感じられたものだった。

斑尾の山をバックにF-PACEで走る
斑尾の山をバックにF-PACEで走る
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F-PACEの内装。ジャガーらしくシフトレバーはダイヤル式。走行モードはダイヤル手前のスイッチで選べる
F-PACEの内装。ジャガーらしくシフトレバーはダイヤル式。走行モードはダイヤル手前のスイッチで選べる
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