「全てのスポーツの本拠地になる」――。サッカーJリーグとの「2017年シーズンから10年間で総額2100億円」という巨額の放映権契約の締結で、世間の耳目を集めた英Perform Group(パフォームグループ)が展開する、スポーツ専門のストリーミングサービス「DAZN(ダ・ゾーン)」。2018年1月25日、DAZN CEO(最高経営責任者)のジェームズ・ラシュトン(James Rushton氏)は、同社が開催した2018年の事業戦略説明会で、さらなる飛躍をアピールした。

右はDAZN CEO(最高経営責任者)のジェームズ・ラシュトン(James Rushton氏)。左はDAZNのアンバサダーを務める、現WBA世界ミドル級王者の村田諒太選手
右はDAZN CEO(最高経営責任者)のジェームズ・ラシュトン(James Rushton氏)。左はDAZNのアンバサダーを務める、現WBA世界ミドル級王者の村田諒太選手
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 DAZNは国内外130種類以上のスポーツコンテンツをネット配信している。NTTドコモとのパートナーシップ契約などによって、会員数は2016年8月の開始後1年で100万人を突破した。

2017年のDAZNの会員数のおおまかな推移(図:DAZN)
2017年のDAZNの会員数のおおまかな推移(図:DAZN)
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 一般に「OTT(over the top)」と呼ばれるネット配信は、かつては技術的な制約から「同時に数万人以上が視聴するスポーツイベントのライブ中継は不可能」と否定的な見解も多かった。しかし、今では試合の映像コンテンツをユーザーに届けるための各種技術の改善によってサービス品質が上がり、すっかり市民権を獲得した。ラシュトン氏は「2018年も新たなコンテンツへの投資を進めるなどして、成長を続けていく」と話した。冒頭のコメントは、放送と比較して設備投資コストが安く、さらに視聴者のデータを取得してマーケティングに活用することで、これまでにないユーザー体験を提供できるOTTがスポーツ中継でも主役になるとの、同氏の強烈なメッセージだ。

停止のトラブル「ゼロ」目指す

 DAZNは2017年、日本で7500試合以上をライブ中継したという。サッカーはJ1からJ3まで、Jリーグ全試合のほか、ブンデスリーガ、プレミアリーグ、ラ・リーガなど欧州サッカーの人気コンテンツの多くを配信している。米国スポーツでは、プロ野球のメジャーリーグ(MLB)やプロアメフトNFLなどをラインナップしている。

 2018年はコンテンツのラインアップをさらに強化する。人気が高いサッカーのUEFAチャンピオンズリーグおよびUEFAヨーロッパリーグの試合を配信するほか、自転車競技ロードレースの配信も開始する。世界三大ツールの一つである「ジロ・デ・イタリア」、クラシックの王様である「ロンド・ファン・フラーンデレン」などUCI(国際自転車競技連合)のワールドツアー全37レース中、21レースをライブ中継する。
 
 技術面の改善も進める。映像配信のために十分なスループットが確保されず、映像が途中で停止してしまう「リバッファリング」というトラブルの発生率は、2017年2月の時点で日本で約1.2%あったという。それを同年12月には0.2%と1/6の水準にまで改善したが、2018年はさらにシステム投資を続け、「ゼロを目指す」(ラシュトン氏)。

 新機能も追加する。「フォロー&プッシュ通知」「パーソナライゼーション」「ダウンロード」である。フォロー&プッシュ通知は、ユーザーが好きな選手がゴールを奪ったり、好きなチームの試合が始まったりする際に、プッシュ通知する機能である。

 パーソナライゼーションは、ビッグデータへの投資によって提供が可能になったとする機能で、ユーザーの視聴行動や嗜好を学習することで、自分が見たいジャンルの試合などを最初に画面に表示したりする。2018年上半期のリリースを予定する。

2018年に導入する「パーソナライゼーション」機能の画面例(図:DAZN)
2018年に導入する「パーソナライゼーション」機能の画面例(図:DAZN)
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