フルカラーのイラストを車両の“あらゆる”窓に映す――。積水化学工業は、2020年の車載適用を目指して「自発光中間膜」の技術を開発中だ(図1〜3)。フロントウインドーやコンバイナー(表示部)を通して虚像を映す従来のヘッド・アップ・ディスプレー(HUD)と異なり、ウインドー全面に情報を映せる特徴がある。サイドウインドーやリアウインドー、サンルーフへも情報を表示可能。現在はRGB(赤・緑・青)の単色表示のみ可能だが、2025年にはフルカラー化を実現したい考えだ。

図1 積水化学工業の「自発光中間膜」を用いたウインドー
図1 積水化学工業の「自発光中間膜」を用いたウインドー
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図2 プロジェクターでレーザー光を照射する
図2 プロジェクターでレーザー光を照射する
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図3 搭載するプロジェクター
図3 搭載するプロジェクター
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 積水化学工業が開発を進める自発光中間膜は、発光材料を分散させて成形した厚さ0.76mmほどの中間膜を2枚のガラスで挟んで造る。インパネやドアトリムなどに内蔵したプロジェクターからレーザー光を照射すると、中間膜内の発光材料が反応して鮮やかに光る仕組みだ(図4)。同社はガラスの飛散防止や紫外線(UV)カットなどを目的としたウインドー用の中間膜で世界シェアの過半数を握る。次なる一手として、目指すのは表示系HMI(ヒューマン・マシン・インターフェース)への参入だ(関連記事:部品メーカー主導の自動運転技術、オートモーティブワールド2017

図4 プロジェクターからレーザー光を照射すると、中間膜内の発光材料が反応して鮮やかに光る(出所:積水化学工業)
図4 プロジェクターからレーザー光を照射すると、中間膜内の発光材料が反応して鮮やかに光る(出所:積水化学工業)
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 次世代の表示系HMIで主導権を握ろうと、開発競争は激しさを増している。インストルメントパネル(インパネ)に搭載したカーナビやメーターに加えて、近年では高級車を中心にHUDの搭載が一般的になってきた。これまでドイツBMW社やドイツAudi社などの欧州メーカーが積極的に搭載車種を増やしてきたが、これを追いかけるように、日本の自動車メーカーもHUD搭載車の開発を進めている。2017年2月にはスズキが主力の「ワゴンR」で軽自動車に初めてHUDを搭載するなど、小型で安価なHUDが実現しつつある(関連記事:メーターとカーナビ勢で競争激化)。