2020年ごろの実用化をめざす第5世代移動通信システム(以下、5G)に関する議論が、第5世代モバイル推進フォーラム(5GMF)などをはじめ国内外で活発に行われている。移動通信の仕様策定を行う団体3GPP(3rd Generation Partnership Project)では2015年9月に米国アリゾナ州、フェニックスで「RAN Workshop on 5G」が開催された。移動通信関連の企業・業界団体による約80件の発表があり、それぞれから5Gに対するビジョンが紹介された。この発表を受ける形で、3GPPでは2016年から策定作業が始まる「Release 14」から本格的な検討がされる見込みである。Qualcommもこのワークショップで、我々が考える5Gに関する具体的な技術の方向性を紹介し、2020年に向けての仕様開発スケジュールを提案した。

†第5世代モバイル推進フォーラム=5Gの早期実現を図るため、5Gに関する研究開発および標準化についての調査研究、関係機関との連絡調整、情報の収集、普及啓発活動などを行う国内の業界団体。

 5Gの技術を検討するに当たり、さまざまな業界団体において5G時代のサービスについての検討に多くの時間が費やされている。現時点で考えられるさまざまなユースケースを導き出し、その要求条件をまとめるといった具合だ。これに対して、Qualcommは同ワークショップにおいて、少し違った角度の見方を示した。これまで新しい世代の移動通信システムが登場し、その世代を代表するサービスが提供されてきたが、そのシステムを検討している段階で、それらのサービスを正確に想定できていなかったという点である。2004年頃にLTE/LTE-Advanced(4G)のシステムが検討されていた時代にはスマートフォンは登場しておらず、誰も現在のようなスマートフォンが中心の市場が形成されるとは想像できていなかった。

 Qualcommも、5Gのユースケースやサービスを検討することは重要と考えるが、それにとらわれすぎず、現時点で考えられる最良の技術をサポートしていくことが5G成功の近道であると考えている。従って、ここでは5Gのユースケースや要求条件などの議論は省略し、Qualcommの考える5Gシステムの仕様開発スケジュールや要素技術について説明をする。