2015年は、日本の宇宙探査において惑星探査の先進国入りを果たすための重要な年となった。特にこの12月、大きなイベントが続いた。その一つが、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の金星探査機「あかつき」の金星の周回軌道への投入だ。

 あかつきは2010年5月21日、「H-IIA」ロケット17号機によって種子島宇宙センターから打ち上げられた。その後、順調に飛行を続けたものの、同年12月7日に実施した金星の周回軌道への投入に失敗。地球以外の惑星の周回軌道に探査機を投入するという、日本初の偉業を果たせなかった。

 原因は、燃料タンクから主推進装置に燃料を送るシステムの不具合だった。これにより、主推進装置に送り込まれる燃料と酸化剤の量的バランスが失われ、同推進装置が異常燃焼を起こして探査機の姿勢を適切に制御できなくなり緊急停止に追い込まれた。ただ、幸いにして軌道投入のために燃料を使わずに済んだため、その燃料を使っての再挑戦が2015年12月7日に実施された。

 再挑戦では、主推進装置が使えないことから姿勢制御スラスターというサブの推進装置を使っての投入となった。今回は金星の周回軌道に入るためのラストチャンスとされたが、JAXAは見事にリベンジを果たした(「金星探査機『あかつき』、周回軌道へ投入成功」)。同月9日の時点で、あかつきは楕円軌道を描いて周期約13日14時間で周回中だ。これで惑星探査の分野でも日本はデータを世界に供給できるようになり、同分野で世界に貢献できるようになった。そして、大きな重力を持つ地球以外の惑星の周回軌道に探査機の投入を成功させたことがなかった日本にとっては、これが大きな一歩となった。

「あかつき」プロジェクトチームのメンバー
「あかつき」プロジェクトチームのメンバー
プロジェクトマネージャの中村正人氏(中央)、および同プロジェクトサイエンティストの今村剛氏(左)と廣瀬史子氏(右)。画像:JAXA
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