省エネの切り札とされるパワー半導体。2015年は、パワー半導体素子(以下、パワー素子)のメーカーの買収や協業が相次いだ。SiCやGaNといった次世代のパワー半導体の適用も進んだ。加えて、酸化ガリウムやダイヤモンドといった、SiCやGaNよりも材料特性が優れるとされる材料の開発も進展した。なお、詳細については、本稿にある関連記事をお読みいただきたい。

ON Semiは買収、パナは協業

 2014年は、ドイツInfineon Technologies社による米International Rectifier(IR)社の買収が大きなニュースだった。2015年は、米ON Semiconductor社による米Fairchild Semiconductor社の買収が、パワー半導体業界で注目を集めた。買収総額は約24億米ドル。買収によって両社の2015年の売上高を合わせると50億米ドル弱になる見込みで、メモリーメーカーを除く半導体メーカーで10位になるという(図1)。

図1 メモリーメーカーを除く半導体メーカーで10位になる(図:ON Semiconductor社)
図1 メモリーメーカーを除く半導体メーカーで10位になる(図:ON Semiconductor社)
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 買収の狙いは、パワー素子やパワー素子を搭載したモジュール品などのパワー半導体事業の拡充だ(関連記事)。ON社とFairchild社で重複が少なく、補完関係にあるという。例えば、耐圧。ON社は低耐圧から中耐圧のパワー半導体に、Fairchild社は中耐圧から高耐圧品に強みを持つ。つまり、今回の買収によって、低耐圧から高耐圧まで手掛けることになる。

 国内では、パナソニックのパワー半導体関連での協業が目立った。GaNパワー素子では、Infineon社と手を組んだ(関連記事)。両社でGaNパワー素子を開発することに合意した。

 具体的には、パナソニックの「ノーマリーオフ」型のGaNパワートランジスタを、Infineon社の表面実装(SMD)パッケージに組み込む。既に「DSO(Dual Small Outline)」と呼ぶ表面実装パッケージに封止した、耐圧600Vでオン抵抗70mΩのGaNパワー素子を開発済みだ。

 SiCでは、三社電機製作所(以下、三社電機)とタッグ。パナソニックのSiC MOSFETを搭載した、耐圧1200Vのパワーモジュールを三社電機と開発した(図2)。大型のパワーコンディショナーの他、産業用や鉄道用インバーター装置などに向けたものだ(関連記事)。

図2 左がパナソニックと三社電機が開発したSiCパワーモジュール、右が従来のSi IGBTモジュール
図2 左がパナソニックと三社電機が開発したSiCパワーモジュール、右が従来のSi IGBTモジュール
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