酸化ガリウムやダイヤモンドが名乗り

図12 酸化ガリウムはSiCやGaNよりも特性が優れる
図12 酸化ガリウムはSiCやGaNよりも特性が優れる
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 2015年は、SiCやGaNといった次世代材料よりも特性が優れるとされる、いわば“次々世代”のパワー半導体の製品化が始まった(図12)。

 酸化ガリウムは大きく2つの研究グループがある。1つは、「コランダム」と呼ばれる構造を備えた「α型」を手掛けるグループ。もう1つは、β型を手掛けるグループである。

 

 前者では、ベンチャー企業のFLOSFIA(本社・京都市)が力を入れている(関連記事)。同社は、耐圧531Vでオン抵抗が0.1mΩcm2と低いショットキー・バリア・ダイオード(SBD)を開発したことを2015年10月に明らかにした。今回の成果を基に、パワー素子としては一般的なTO-220パッケージに封止した耐圧600V品のサンプル出荷を2015年末に開始した。2018年までに量産する考えだ。

図13 β型酸化ガリウムのエピウエハー
図13 β型酸化ガリウムのエピウエハー
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 β型では、ベンチャー企業のノベルクリスタルテクノロジー(本社・埼玉県狭山市)が、エピウエハーを2015年10月に発売した(図13)。このウエハーは、情報通信研究機構(NICT)や東京農工大学、タムラ製作所などの研究チームの成果である。ノベルクリスタルテクノロジーは、タムラ製作所からカーブアウトしたベンチャーで、「NICT技術移転ベンチャー」という位置付け。2016年度に6000万円、2020年度に7億円、2025年度に80億円の売上げを目標に掲げている(関連記事)。

図14 ダイヤモンド基板
図14 ダイヤモンド基板
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 ダイヤモンドも、SiCやGaNよりもパワー半導体材料として潜在力が高いとして期待されている。並木精密宝石は、青山学院大学 教授の澤邊厚仁氏らの研究グループと共同で、ダイヤモンドの単結晶を開発した(図14)。この単結晶から、半導体素子の基板を作る。現在、30mm角品を試作済みだという(関連記事)。

 

 販売は2016年度から。まずは15mm角品からサンプル出荷し、2016年度末には1インチ(約25mm)角の基板を量産する予定。2017年度内には、1.5インチ角へと拡大することを目標に掲げる。いずれも、ダイヤモンド基板としては大きい。

 このように、2015年は、パワー素子メーカーの買収や協業が相次ぎ、SiCやGaNといった次世代のパワー半導体の適用も進んだ。2016年も、この流れが続きそうだ。