国際モダンホスピタルショウ2016の大塚デジタルヘルスの展示ブース
国際モダンホスピタルショウ2016の大塚デジタルヘルスの展示ブース
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 人工知能(AI)という存在とどう向き合うか。2016年は医療関係者にとって、こんな思いが頭をよぎった年ではないだろうか。AIの医療応用に向けた動きが、それほど活発な1年だった。政府も医療分野へのAI活用を支援しようと本格的に動きだしている(関連記事1)。

 今夏、医療業界だけではなく、社会全体に大きなインパクトをもって受け止められたニュースがある。「白血病のタイプをワトソンが10分で見抜き、患者の命を救った」というのがそれだ。ワトソンは「IBM Watson」のこと。今回の成果をあげた東京大学医科学研究所が、がんゲノム解析への活用に向けて2015年に導入したAIシステムである(関連記事2)。

 AIが遠い将来ではなく、今日、明日にでも患者の命を救うことにつながる。この事実を日本で広く知らしめた最初の存在が、Watsonだった。

 Watsonに関しては、その能力を精神科領域の電子カルテ解析に活用しようと、大塚製薬と日本IBMが2016年6月に合弁会社「大塚デジタルヘルス」を設立したことも話題を呼んだ(関連記事3同4)。新会社が提供するソリューション「MENTAT」は、Watsonの自然言語処理能力を活用し、電子カルテの自由記述文から患者の入院長期化や再発に影響を及ぼす因子を抽出。医師と看護師、ケースワーカーの3者がいち早く対処すべき項目を共有できる形に整理することで、早期退院や再発予防につなげる仕組みである(関連記事5)。既に、開発に参加した桶狭間病院 藤田こころケアセンターで実臨床への応用が始まっている(関連記事6)。