企業存続に影響する時代に

 気候変動問題が深刻化したことを背景に2016年11月にパリ協定が発効した。その後、化石燃料への圧力の高まり(例:政策・規制の進展、補助金などの廃止、ダイベストメント)、再エネニーズの増加、バリューチェーンマネジメントへの圧力の高まり、パリ協定に整合した削減目標(SBT)設定への圧力の高まりといったことが現実化した。

 そのため、企業の環境対応戦略の巧拙が財務及び事業継続に大きな影響を与える社会になり、企業の環境対応戦略に対する投資家などの関心やESG投資が急速に進展した(図8)。そして、それらの基盤となるESG関連情報開示への圧力やCDPをはじめとした評価制度への注目度が急速に高まってきた。

図8●気候変動問題とビジネスへの影響の概観
図8●気候変動問題とビジネスへの影響の概観
(出所:筆者作成)
[画像のクリックで拡大表示]

 今後、温室効果ガス排出削減への対応が企業価値に影響を及ぼし、対応を怠る場合、資金調達が困難になるとともに、バリューチェーンから取り残される(取引停止)可能性がある。環境対応が、財務や企業存続そのものにも影響する社会になっていくことが想定される。

 次回は、企業としてこのような社会的潮流にどのように対応すればよいか、その対応の方向性について解説する。