再エネが増えると蓄電池ニーズは顕在化する

 この分野は、再生可能エネルギーによる発電量の増加に伴い、重要度を増している。蓄電池ビジネスは、今やニッチマーケットではなく、大手のサービスプロバイダーの活躍する分野になった。

 再エネ比率が10%程度なら、火力発電など従来型の発電に隠れて、蓄電池のニーズは顕在化しない。しかし、カリフォルニア州やハワイ州のように再エネ比率50%や100%を目指すとなると、蓄電池は一気に「なくてはならないもの」に変わる。

 太陽光と蓄電池の進化は、相互に補完しあっている。太陽光の急増によってピークシフトやダックカーブ対策、出力変動対策、出力抑制の防止などが必要になると、現時点では蓄電池しか解がない。

 蓄電池は産業構造やプレーヤーの変遷だけでなく、ビジネスモデルの面でも太陽光の10年後ろを追いかけている。太陽光で培ったビジネスモデル、PPA契約や資金調達ノウハウが蓄電池ビジネスに生かされている。

導入量でも「10年追随説」

 太陽光と蓄電池の両者の量的な関係を見てみると、2017年の米国の太陽光の新規設置はだいたい1万2000MW程度である。(ちなみに、ITC切れを想定した駆け込み分を除くと9000MW程度)。

 一方、2017年の米国の定置型蓄電池の設置量は400MW程度と予想されている。ちょうど10年前の太陽光の設置量が400MW程度だったので、導入量の面でも「10年追随説」は当てはまる。

 2017年は9000MWの太陽光に対して、400MWのエネルギー貯蔵。単純に割り算すると4.4%であるが、現状の蓄電池価格を考えるとこんなものだろう。

 しかし、蓄電池価格は今後、必ず下がり続ける。そして、これに伴って、定置型蓄電池の設置量は年率20%~30%で増加する。ちなみに太陽光の増加率は現在、年率10%程度である。

 一般的に、「川上と川下は儲かるが、中流は儲からない」と言われる。この通説は蓄電池にもある程度当てはまる。しかし、本社がシリコンバレーにある米オクティリオンパワーシステムズ(Octillion Power Systems)のように、徹底的に中流にこだわり、アーキテクチャの改善と大規模化を切り口に、それなりに成功を収める企業も出てきている。

 川上と川下は参入企業が急増し、激しい価格競争となっている。オクティリオン社のような中流に特化したアプローチは案外、当たるかもしれない。

 ちなみに、オクティリオン社の創業者は、テスラでスポーツカータイプの電気自動車「Roadstar」のモジュール設計を行った人物だ。中国にモジュール組み立て工場を4つ保有し、年間4GWhに相当するモジュール製造を行っている。