本記事は、情報処理学会発行の学会誌『情報処理』Vol.56, No.12に掲載されたものの抜粋です。全文を閲覧するには情報処理学会の会員登録が必要です。会員登録や全文の閲覧に関してはこちらから(情報処理学会のホームページへのリンク)

ゲーム制作教育とプログラミング

 筆者の本務校である東京工科大学メディア学部では、2005年度よりゲーム制作の教育と研究に取り組んでいる。今でこそ、ゲーム制作を教育や研究で扱う大学は随分増えたが、当時は希少であった。大学でゲーム制作教育を行うことが難しい理由はいくつかあるが、その1つは大学の多くの学部学科が専門領域ごとに縦割りに構成されていることである。近年のゲーム制作では多様な専門家が必要であり、従来的な学部学科の中だけでは人材がまかなえないことが多い。メディア学部では多様な専門性を持った教員が揃っており、ゲーム制作を実習を通して学ぶ土壌があったことが幸いした。

 しかしその一方、学際型の学部では学生の素養が「広く浅く」となってしまう面も否定できない。ゲーム制作において、それが最も切実となるのはプログラミングである。ゲームは、遊ぶ立場としては大変親しみやすいが、プログラミングという観点からいうと実は初学者にはかなり難しい対象である。特にリアルタイム3D を利用する場合、プログラム言語だけではなく数学や物理の素養も必要となるため、挫折する場合も多々見受けられる。

 これに対応する方法にはさまざまな教育手法が考えられるが、本学での取り組みの1つとして独自ツールキットである「Fine Kernel Toolkit」(以下「FK」)を用いて学生に教育を行うという方式を採用している。図-1は、FKを用いて制作されたゲームの開発途中の画面出力の様子である。

図-1 FK による開発画面
図-1 FK による開発画面