本記事は、情報処理学会発行の学会誌『情報処理』Vol.57, No.2に掲載されたものの抜粋です。全文を閲覧するには情報処理学会の会員登録が必要です。会員登録や全文の閲覧に関してはこちらから(情報処理学会のホームページへのリンク)

 コンピュータやインターネットなどの情報通信基盤が整備した21 世紀の高度情報化社会において、日本生まれのゲーム・マンガやアニメーションなどのいわゆるディジタルコンテンツが世界中に広がっている。一方、従来のものづくりの価値観である性能・信頼性・価格に加え、感性を第4 の価値、すなわち「感性価値」として認識しようという国の取り組みも開始された1)。筆者らは、日本生まれのディジタルコンテンツの人気の大きな要因として、高度できめ細やかな技術力とともに、キャラクタ等の「かわいさ」が挙げられると考え、人工物の感性価値としての「かわいい」に着目し、その物理的諸属性を系統的に解析する研究を開始した。ここでは、これまでに行ったいくつかの研究について、概説する。それぞれの研究においては主にアンケートを用いて「かわいい」の評価を行っているが、具体的には種々の手法を用いており、その理由は個別に紹介する。

 なお、予備実験の結果、おおむね40代以上の男性とそれ以外(40代以上の女性や、10代・20代の男女)では傾向がかなり異なることが分かったので、以下の研究では主に20代男女を実験協力者とした。