連載の2回目で、米国や豪州において既に経済的に成立している蓄電池の活用事例を紹介した。ただし、先の米国の例で蓄電池が利用されるようになったのは、市場の仕組みが変更され、蓄電池の特性には経済的な価値があると、正当に評価されるようになったためだ。連載の最終回では、このような制度の変更を通じた今後の蓄電池市場の拡大について説明したい。

 前回、蓄電池が周波数調整に活用されている米国の事例を紹介したが、これが本格化した背景には、米国における周波数調整の調達額の算定方法が変更されたことが挙げられる。2011年、米国のエネルギーに関する規制機関(FERC: Federal Energy Regulatory Commission)によって、周波数調整市場において、“Pay for Performance(実績に応じた支払い対価)”制度が導入された。周波数調整の市場の調達額は、今までは提供可能な調整「量」(設備容量あたり支払い)のみが反映されていた。しかし、本制度によって、系統運用機関の指令にいかに「速く」反応し、要請された調整量を「正確に」達成できたかに関しても、調達額が反映されるようになったのである。

 このような算定方法の変更によって、指令の変化に対して俊敏に応答できる蓄電池を用いるサービス提供者は、周波数調整市場において収益が増加した。下図は、周波数調整の市場決済価格の推移を表しているが、本制度導入後、周波数調整サービスに対する収益が大きく増加したことがわかる。

“Pay for Performance”制度導入前後の周波数調整サービス市場決済価格推移
“Pay for Performance”制度導入前後の周波数調整サービス市場決済価格推移
出所:EUW 2014におけるNEC発表資料より筆者編集
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