前回は、系統運用における蓄電池の特性と、期待される機能(①系統の周波数の調整、②再生可能エネルギーを電力系統に統合するための出力変動調整、③マイクログリッドでの需給調整、④配電設備や需要家におけるピークシフト、⑤分散電源の普及拡大に伴う地域的な電圧調整)を紹介した。このように蓄電池が注目される一方で、蓄電システムは一般的に高価であると考えられており、経済性を考慮すると、導入は困難との見方がある。しかし、上で挙げた蓄電池の機能の中には、既に経済的に成立している事例も存在する。白書では各国におけるこのような事例が取り上げられており、今回はそれらを紹介したい。

電力需給バランスと周波数調整のイメージ
電力需給バランスと周波数調整のイメージ
需要が供給を上回る(青部分)と周波数上げ調整が必要となり、供給が需要を上回ると(黄色部分)周波数下げ調整が必要となる。

 最初の事例として、米国の周波数調整サービスを紹介しよう。具体的な事例紹介に入る前に、まずは周波数調整について説明する。上図で示されている通り、電力系統における周波数は、電力の需給バランスの変動によって変化する。需要が発電量を超えると下降し、発電量が需要を超えると上昇する。前回も述べたように、従来は発電設備の供給量を変化させることで、周波数調整を行っていた。しかし、再生可能エネルギーの普及拡大により、需給バランス変動の増加が予想され、より細やかな調整が求められると考えられる。蓄電池はこの点において非常に優秀である。系統運用者より発せられる周波数調整シグナルと、それに対するタービン発電機と蓄電池の調整実績が下図だが、これからも蓄電池の反応の速さが見てとれるだろう。

周波数調整シグナルに対する従来の発電機と蓄電池の調整イメージ
周波数調整シグナルに対する従来の発電機と蓄電池の調整イメージ
発電機による調整では調整シグナルに対して出力の調整の時間遅れが発生するが、蓄電池による調整ではシグナルに正確に対応できる。