Global Smart Grid Federation(GSGF)によって、電力系統への適用を前提とした、大型蓄電池の活用に関する白書がまもなく発表される。GSGFは世界各国のスマートグリッド関連団体が集まった組織であり、日本からはスマートコミュニティ・アライアンス(JSCA)がメンバーとなっている。GSGFは、スマートグリッドの発展と普及を目的として、スマートグリッドに関する政府・非政府組織の協働支援や、各国の関連技術・施策の共有を行っている。

 GSGFでは、スマートグリッドに関するいくつかのテーマについてワークグループ(WG)を設置し、GSGFメンバー国の電力会社、メーカー、研究機関が参加して、各国の情報共有と今後に向けた課題や展開について分析している。昨年度は、日本は電動車WGのリーダーとして、電動車の普及に関する白書を取りまとめた。この電気自動車の白書については、日経テクノロジーオンラインの連載でも紹介した(電気自動車普及に成功した国は何をしたのか?)。

 現在実施中のワークグループについては、系統用大型蓄電池WGを日本がリーダーとなり活動してきており、間もなく白書の形でとりまとめられる見込みだ。

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 今回、この系統用大型蓄電池に関する白書は、一般的には高価ゆえに本格的な大量普及は当面先と考えられている系統用の大型蓄電池について、各国における蓄電池の導入事例や、中でも経済的に成立している用途を取り上げた上で、電力システムに関する制度変更などによる蓄電池市場の拡大の可能性を検討している。本連載では、この白書におけるポイントを3回に分けて紹介する。

国吉 浩 (くによし ひろし)
国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)
特命審議役
国吉 浩 (くによし ひろし) 1984年通商産業省(現経済産業省)入省後、エネルギーや技術に関する様々な政策を企画・実施してきた。国連工業開発機関(UNIDO)の事務局長補佐官や東京工業大学教授など、経済産業省以外でも活躍。現在はNEDOにおいて、スマートコミュニティをはじめ、エネルギー・環境関係の技術開発や実証事業を推進している。2014年7月より、スマートグリッドの世界的な 普及を推進する産業界の国際組織であるGSGF(Global Smart Grid Federation)副議長を務めている。1958年生。東京大学工学部電気工学科卒業、ケンブリッジ大学修士(国際関係論)、京都大学博士(エネルギー科学)。関西学院大学客員教授。