AIスピーカーは、家電製品のIoT化を一気に進める原動力となる可能性を持つ。ところが、「日本の機器開発はハードウエア志向が強すぎ、IoT機器の常時インターネット接続が単なるリモコン程度の役割にしか使われていない」と主張するのは、明治大学 総合数理学部 先端メディアサイエンス学科 准教授の渡邊恵太氏だ。同氏はハードウエア、ソフトウエア、インターネットが融合する時代のUI(ユーザーインターフェース)の在り方を研究している。

――AIスピーカーについて、どのような印象をお持ちでしょうか。

明治大学 総合数理学部 先端メディアサイエンス学科 准教授の渡邊恵太氏。
明治大学 総合数理学部 先端メディアサイエンス学科 准教授の渡邊恵太氏。

 米Google社の小型AIスピーカー「Google Home Mini」は6000円(税込みでは6480円)と低価格ですから、さっそく個人的に購入してみました。実はその前にβ版だったLINEの「Clova WAVE」を研究室で購入したのですが、何ができるのかよくわらからず、学生たちもあまり使わない。その影響もあってあまり期待していなかった分、Google Home Miniは「意外にいい」と思っています。

 何が一番良いかと言えば「OK、Google」のほかに使える「ねぇ、Google」という開始語。「ねぇ」というのが良い。他社の「Hey、Siri」や「Hi、Xperia」などは、日本語には馴染まないノリ。音声入力自体が「恥ずかしい」と抵抗感があるとされているのに、なぜ開始語が英語なのか。日本で「へい!」って言えるのは、寿司屋やラーメン屋だけですよ(笑)。「ねぇ」は「OK」よりもさらに障壁が低くて誰でも言いやすい。いかに抵抗感のない呼びかけにするか。開始語や呼び方のルールなどはユーザーインターフェース(UI)設計の重要な仕事になるでしょう。

Google社の小型AIスピーカー「Google Home Mini」。(写真:Google社)
Google社の小型AIスピーカー「Google Home Mini」。(写真:Google社)
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 また、実際に使ってみて音声入力の「インタラクションコスト」の低さを痛感しました。「しゃべる」という日常的な動作をインターフェースにしているから、「ねぇ、Google」という自然な話しかけ以外、何の行為をする必要もない。例えばテレビを見ていて、ふと黒柳徹子さんって何歳なんだろう?と思ったら、そのまま「ねぇGoogle、黒柳徹子って何歳?」と尋ねるだけ。すると「84歳です」なんて普通に答えてくれる。

 こうしたことはスマートフォン(スマホ)でも調べられますが、起動時にパスワード入力や指紋認証などがあり、アプリを立ち上げて…と操作する必要がある。当然、テレビから視線をそらす必要があります。それが、AIスピーカーなら発言するだけなんですから、インタラクションコストはほぼゼロ。そこが素晴らしい。