「ITpro」2017月8月22日公開のLPWA最前線「存在感を示せるか?桁違いの飛距離見せるソニーのLPWA」を転載した記事です(記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)。

 LPWA(Low Power, Wide Area)は、長距離伝送と低消費電力を特徴とするIoT(インターネット・オブ・シングス)向け通信技術の総称である。通信コストを現在のM2M(マシン・ツー・マシン)向け通信サービスの10分の1くらいまで下げられるかもしれないという期待もあり、注目を集めている。

 2017年始時点で、動きのあるLPWA技術はLoRaWAN、Sigfox、NB-IoT/Cat-M1の大きく3つだった。LoRaWANはオープンで使い始めやすい方式。Sigfoxは仏シグフォックスがパートナーを通じグローバルで展開しているIoTインフラのパッケージサービスで使われている方式。そしてNB-IoTやCat-M1はLTEのIoT向け仕様だ。特にLoRaWANとSigfoxは、国内初の商用サービスが始まり対応製品も増えてきていた。

 そんな中ソニーとソニーセミコンダクタソリューションズが2017年5月、独自方式のLPWA技術を発表した。この技術で目を引くのは、他の技術とはひと桁違う伝送距離だ。「富士山5合目から奈良県日出ヶ岳までの274km」「厚木市の同社オフィスから栃木県男体山までの140km」――といった実験結果が並ぶ。これらの記録が出た時は現在と変調方式が異なるが(当時は基本的な方式を使用)、現在も東京スカイツリーで110km先の群馬県榛名山から送ったデータを受け取れているので、伝送距離は100kmくらいだろうという。

 低消費電力も特徴の1つで、1日に1回データを送るという使い方なら10年持つとしている。またこの技術は、時速100kmの高速移動中も使えることを目指して開発が進められており、現在は達成している。

ソニーのLPWA技術に対応した送信機の試作機。IoTでいう「モノ」側にあたる
ソニーのLPWA技術に対応した送信機の試作機。IoTでいう「モノ」側にあたる
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