これらのFIT発電所を保有もしくは特定契約を結んでいる新電力は、2020年までは大手電力とも十分に割引額を競うことができる。しかし、2020年以降は市場価格が適用されてしまうため、競争力を失うことになる。

 このことを理解している新電力は、もっぱら官公庁などによる電力購入の入札案件獲得に力を入れている。入札案件は契約期間が1年であるため、手離れの良い需要家でもあるからだ。もっとも、これは一時的な利益の確保に過ぎず、2020年以降の問題を根本から解決することにはならない。

 以上が、新電力にとっての「2020年問題」である。2020年以降は、現在登録されている新電力の90%が電気事業からの撤退を余儀なくされると見立てる大手新電力の幹部もいる。新電力は、需要家に対して電力の価格以外の価値を提示し、それが理解され、受け入れられる努力が求められているのだ。

波音に気づかず“水遊び”

 しかし、将来の競争環境に対して危機意識が希薄な新電力は少なくない。

 高圧需要家に対して価格をたたき合い、利益を減らしてでも売り上げを大きくすることに血道をあげている。あるいは、電気事業で利益が上がらないため他の新電力から数多くの業務受託を請け負うことで損失を補填するなど、電力ビジネスとはとても言えない事業を展開しているケースも見られる。

 これらの新電力の中には、売り上げだけをとにかく大きくして上場する、いわゆる「上場ゴール」を狙っている事業者も多いと聞く。売り上げの“水増し策”として電気事業を利用する異業種参入組もいる。もちろん、こうした新電力は一部であり、真っ先に淘汰の大波に飲み込まれるだろう。

 むしろ深刻なのは、まじめにLPガスと電気をセットで販売しているが、そこにさしたる工夫もないというような地域の小規模なエネルギー事業者かもしれない。こうした事業者も大手電力の反撃対象になることは容易に想像がつく。対抗するだけのノウハウや資金力、発電所も備えていない。座して淘汰を免れることは困難と言えるだろう。

 では、大淘汰時代を生き残る新電力は、どのような戦略を立てるべきなのか。