iPhone X(テン)を入手し、無事分解し電池を取り出した日経テクノロジーオンライン分解班。今回はメイン基板を見ていこう。

 発売前の予測段階から、iPhone Xではメイン基板が“見どころの1つ”になると専門家の多くは期待していた。従来、iPhoneでは筐体のスペースを縦に2つ割って、電池とメイン基板を並べて分け合う構造を採用してきたが、今回は電池容量が増えるという事前情報があったからだ。電池が増えればメイン基板に割ける面積はそれだけ減る。従来よりさらに基板を高密度化するためにAppleがどんな手を打ってくるのか、技術者たちは興味津々だったのだ。

上面にはカンパッケージとずらりと並ぶコネクター、フラッシュメモリーと思しき半導体部品が実装されている。(撮影:陶山 勉)
電池を取り除いた基板から、いよいよメイン基板を外す
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 実際、今回のiPhone Xでは前回(第2回)の分解記事で紹介したように、電池を2個に分割してL字形に配置し、筐体のスペースに占める電池の割合を増やしてきた。その分、スペースが減ったのがメイン基板だ。2個の電池でスペースを取った分、基板は面積で見て従来に比べてざっくり3分の2程度になった。

 その基板面積縮小のために採用されたと見られる技術が「MSAP」である。MSAPは、プリント配線基板に微細配線をめっきで形成する「SAP(Semi Additive Process)」法の1つで、微細配線を比較的作りやすいとされる。従来はパッケージ基板に採用されており、iPhone XはMSAPをメイン基板に採用する初の民生機器となる。今回、iPhoneが採用するMSAPでは、配線/配線間隔が30μm/30μmの微細配線になるとみられてきた。

 ただし、MSAPで微細化できるのは基板の配線ピッチだけで、部品点数やその実装面積を減らせる魔法の技術ではない。iPhoneのメイン基板といえば、すき間がまったくなくパズルのようにぎっちりと大小の部品を高密度実装するのが特徴で、もともと余分なスペースなどない。スペースを2/3に減らした基板に、どうやって必要な部品を全部収めたのか、興味津々の専門家と共に、基板を解析してみた。