「また、こういったシステムを使うことによって、試合とトレーニング中の負荷を比較することができます。昔だったら感覚でやっていたことが多いのですが、システムを導入することで可視化できるようになりました」(同)

急激な負荷が2人の選手の怪我につながってしまった(図:レスター・シティFC)
急激な負荷が2人の選手の怪我につながってしまった(図:レスター・シティFC)
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 「レスターの例でいうと、試合の3日前には負荷をかけなかった。それによって怪我を減らすことができました。一方、負荷が安定していたのに対し、急激に負荷をかけたことで2人の選手が大きな怪我をした、という悪い事例もあります」(同)

テクノロジーへの投資は“賢い投資”か?

 「テクノロジーやシステムにお金をかけることもできますが、結局は“人”が重要です。その人がどのようにシステムを使うのか。そこに関していうと、選手はもちろんですが、スタッフにかけるお金も非常に重要になってきています」(Balsom氏)

 レスターではプレイングスタッフ、コーチングスタッフなど、多くのスタッフが在籍している。さらに働いている年数が長いスタッフが多いのが特徴で、なかには20年近く勤めているベテランスタッフもいる。同じ過程を長い間、一緒に過ごしたことも優勝へ導いた要因だという。

 「もちろん、一番重要なのは選手です。なので、私たちは選手としっかりコミュニケーションを取れるプロセスを作りました。今はアプリなどさまざまなサービスがありますが、研究で言われているのが、選手と直接コミュニケーションを取ることで正確な情報をインプットできる、ということです。テクノロジーと人のバランスが重要で、必ずしもテクノロジーが全てではありません。結局は“人間が判断するもの”だということを忘れないようにしています」(同)

サッカーに対する科学的なサポートは“賢い投資”とBalsom氏(図:レスター・シティFC)
サッカーに対する科学的なサポートは“賢い投資”とBalsom氏(図:レスター・シティFC)
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 「サッカーに関して、科学的なサポートが“賢い投資”と言えるかと質問されたら、私は『Yes』と答えます。テクノロジーは負荷を測ってくれるもので、それを管理・コントロールするのは人間です。それによって怪我は削減できますし、人とテクノロジーを融合することによって、パフォーマンスを高めることもできます。こういったことから、コストではなく投資と言えるのではないでしょうか」(同)

 価値のある投資を行うためには、使う側がテクノロジーの本質を見い出すことが重要だ。進化の著しい現代だからこそ、テクノロジーとの付き合い方を深く考えるべきだと言えるだろう。