HMDはスマホ型が主流になる

――ソフトバンクでのVR配信サービスの計画は。

加藤 2016年度内はVR配信サービスを展開するための準備期間とし、2017年度、つまり4月以降にVR配信サービスを開始する。コンテンツは、まずはスポーツと音楽の2本柱になる。

 ライブストリーミングと蓄積型(ダウンロード)サービスの両方を提供する。例えば、試合がある週末はライブ配信を実施し、それ以外の日はスポーツのハイライトシーンの蓄積型サービスを提供したりする。

 こうしたサービスは、NextVR社の技術とノウハウを軸に展開する。当面、他社が同レベルの品質の配信サービスを実現するのは難しいと考えている。

――VR配信サービスが普及するために必要なことは何か。

加藤 まず、HMDの普及が絶対条件になる。現時点ではHMDを持っている人が少な過ぎる。HMDには、Oculus RiftやHTC Viveのようにパソコンに接続して使う高性能タイプもあるが、台数ベースではGearVRのようなスマホ型が主流になっていくと見ている。スマホの進化のスピードは速く、ほとんどの人が保有するスマホが自然に「VR Ready」になっていくだろう。

 米国では既にGearVRが累計100万台以上も出荷されており、国内より使用環境で先を行っている。ただし、GearVR(価格は1万5000円程度)もどちらかと言えば“ミッドレンジ”なので、段ボールで作られていて手元のスマホと組わせて使う「Cardboard(カードボード)」(1500円程度)のようなより安価なソリューションを訴求し、敷居を下げていくことも必要になる。

 コミュニケーション機能の提供も重要だ。VRは1人で没入してコンテンツを楽しむのに適しているが、スポーツでは友達などと一緒に観戦して盛り上がりたいというニーズも多い。そこでVR空間に友達の「アバター」を出現させ、田舎にいる友達などと一緒に観戦できるような環境を提供できたらいい。NextVR社でも、そのような機能の開発を検討している。

 また、HMDではヘッドトラッキングの時間の遅れや映像の解像度が低いことが理由で「VR酔い」を起こすことがある。機器自体が重く長時間の使用によって疲れるという課題もある。今後は性能面も含め、HMDがもっとスタイリッシュになっていく必要がある。

 HMDの使用には「13歳未満の子供は斜視になる危険性がある」として、現段階では世界的に自主規制があることも課題だ。VRの本格的な普及という観点では、将来的に状況の改善が必要になるだろう。