スポーツの現場で、アスリートのフォームを映像でチェックするのは、アマチュアレベルでももはや“当たり前”になりつつある。トップアスリートのようにより上のレベルでは、それを「マルチアングル」で、つまり複数の視点の映像でチェックしたい、というニーズが高い。
ところが、それを実際にやるとなると機材が大がかりになってコストが高くなる上、複数台のカメラで撮影した映像を同期させるといった編集作業に多大な労力がかかる問題があった。資金や人的リソースに余裕のある現場しか、そのようなことはできなかったのである。
こうした現状を大きく変えるサービスを、ヤマハとベンチャー企業のスポーツセンシング(福岡市)が共同開発した。名称は「ChimeCa Sports(キメカスポーツ)」。2017年内の販売開始を目指している。2017年7月25日~27日に開催されたスポーツ・健康産業展示会「SPORTEC 2017」に参考出品した。
ChimeCa Sportsは、競技場内の異なる場所に設置したスマートフォン(スマホ)が撮影した映像を、ヤマハが保有するオーディオシンク技術「ChimeCa」を使って自動で同期し、1つの画面内で再生。現場でコーチなどが選手に即座にフィードバックできる。従来のシステムと比較すると、専門知識がなくてもセットアップができる、撮影した映像をその場で確認できる、コストが安い、などの特徴があるという。
屋内競技で使えるオーディオシンク
ChimeCa Sportsのパッケージには、専用のサーバーとカメラの役割をするスマホが同梱される(スマホの台数はユーザーが指定可能)。使い方はこうだ。まず、スマホを撮影したい場所に設置する。スマホは設定済みなのでアプリを起動するだけでいい。タブレットなどからChimeCa SportsのWebアプリケーションにアクセスして「REC(録画)」ボタンを押すと、撮影を開始する制御信号がWi-Fi経由でスマホに送られる。撮影を停止すると、スマホからサーバーにWi-Fi経由で映像が自動送信される。
ここでヤマハのオーディオシンク技術の出番となる。同技術は、映像に含まれる音声情報の波形を解析して、異なるアングルから撮影した複数の映像を同期するものだ。同技術を使うのは、(1)無線の信号は遅延することがある、(2)スマホはGPS(全地球測位システム)経由で正確な時間情報を取得できるが、屋内ではGPS信号が得られない、ためという。