どんなスポーツであれ、“ちょっと上”を目指すプレーヤーにとって、自分のフォームを撮影してチェックすることはスキルアップに有効な手段となる。

 でも、いざ1人でやるとなると結構手間がかかる。デジタルカメラ(デジカメ)を三脚に固定して適当な場所に設置し、動画撮影の開始・終了時にわざわざボタンを押しに行ったり、撮影した動画をスマートフォン(スマホ)やパソコンに転送したり・・・。プレーヤーのニーズは高いものの、面倒であることが先に立ち、こうした使い方がスポーツの現場にいまだ浸透していないのが実情だ。

 カシオ計算機はその現状打破に挑む。同社は2016年6月17日、スマホと連動してゴルフのスイングを分析できるデジカメ「EX-SA10 GSET」を発売した。

ゴルフ練習場で「EX-SA10 GSET」をセットしてスイングを撮影している様子(写真:カシオ計算機)
ゴルフ練習場で「EX-SA10 GSET」をセットしてスイングを撮影している様子(写真:カシオ計算機)
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「EX-SA10 GSET」は、レンズ形状のカメラと三脚、一脚ポールなどを同梱する。三脚に一脚ポールを取り付け、その上にカメラ部を、下に手持ちのスマホを取り付ける。実勢価格は4万5000円(税抜き)(写真:カシオ計算機)
「EX-SA10 GSET」は、レンズ形状のカメラと三脚、一脚ポールなどを同梱する。三脚に一脚ポールを取り付け、その上にカメラ部を、下に手持ちのスマホを取り付ける。実勢価格は4万5000円(税抜き)(写真:カシオ計算機)
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 デジカメと言っても、EX-SA10 GSETはかなりユニークだ。ゴルフ練習場などで使いやすいよう、あくまで“ゴルファー目線”で開発したからである。レンズ形状の小型デジカメと手持ちのスマホを三脚に固定し、スマホをコントローラーとして使って遠隔操作で撮影する。

 かつてデジカメメーカーは、カメラ機能を内蔵するスマホを自分たちの地位を脅かすライバルとして敵視し、その台頭を恐れた。「カシオも以前は、すべてをデジカメで完結させるという方針で開発していた」(カシオ計算機 営業本部 戦略統轄部 QV戦略部 企画室 室長の仁井田隆氏)。

 しかし、現実は“餅屋は餅屋”である。言うまでもなく、デジカメは画質や画角の広さに勝るものの、撮影した動画の取り回しではスマホに勝てない。スイングを分析する際は画面上に所定のラインを引いたりするのが一般的だが、それをするには画面が大きくタッチ操作に対応したスマホが圧倒的に有利だ。EX-SA10 GSETが誕生した背景には、スマホに任せるところは任せる、という“割り切り”の発想がある。「最近では常にデジカメとスマホの連動(共有、利用)を念頭に置いて設計している」(同)。

スマホへ画像を自動転送

 EX-SA10 GSETに同梱されるのは、小型のカメラと三脚、一脚ポール(自撮り棒)などである。右の写真のように、一脚ポールにカメラを固定し、その下に手持ちのスマホを取り付けてカメラを操作する。

ディスプレーを分離したカメラ部。レンズは広角端が16mmで、ハイスピードでの動画撮影(512×384画素で240フレーム/秒、640×480画素で120フレーム/秒)に対応している(写真:カシオ計算機)
ディスプレーを分離したカメラ部。レンズは広角端が16mmで、ハイスピードでの動画撮影(512×384画素で240フレーム/秒、640×480画素で120フレーム/秒)に対応している(写真:カシオ計算機)
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 カメラは、通常のデジカメからディスプレーを取り除いた構造。サイズは直径60.9mm×高さ69.3mm×奥行き38.7mm、重さ111gと小型・軽量だ。

 特徴は、スイング分析用にハイスピードでの動画撮影(512×384画素で240フレーム/秒、640×480画素で120フレーム/秒)に対応している点と、単焦点ながら35mmフィルム換算で16mmと超広角な撮影が可能な点だ。

 これまでに販売されていたゴルファー専用デジカメはレンズの広角端が25mmまでなので、「自分のフォームを前から撮影する場合、隣前の打席をつぶさないと撮影できないというユーザーの不満の声が寄せられていた。16mmの超広角レンズと、同梱する小型の三脚を組み合わせると、自分の打席内に設置してスイング全景を撮影できる」(仁井田氏)という。