スポーツ選手やチームが社会奉仕活動を行うことはもはや当たり前となっているが、米国で近年増えてきているのが「STEM教育」や「STEAM教育」への取り組みだ。

 STEMとは科学(Science)、テクノロジー(Technology)、エンジニアリング(Engineering)、数学(Mathematics)の頭文字を取ったもので、これらの教育分野を指す。

 STEAMはSTEMにアート(Art)を加えたものだ。STEMはハイテクやIT(情報技術)産業が拡大しているにもかかわらず、そうした職種への適格者が不足しているという懸念に端を発している。

 その原因としてSTEM教科を統合的に教えるカリキュラムについて、特に初等教育で適切に行われていないことが指摘されてきた。STEMに関連した求職数は非STEMの1.7倍の比率で増加しているというデータや、今後10年間に全職種の80%はSTEMに関する知識が必要になるという予測がある。一方で、教育省はSTEM関連キャリアに関心を持つ高校3年生は全体のわずか16%、とも発表している。

 こうしたこともあって、米国立科学財団を中心にSTEM教育を初等教育から受けさせる動きが広がり、それがスポーツ界にも波及している。子供に人気のあるスポーツを入り口に科学実験ショーや物理実験など子供にも親しみのある形でSTEMに触れてもらい、STEMへの関心を高めてもらうのが狙いである。

シリコンバレーの49ersがSTEMで提携

 スポーツにおける代表例の1つとして挙げられるのが、米プロアメリカンフットボールNFLのサンフランシスコ49ersの取り組みである。同チームの本拠地はシリコンバレーのど真ん中に位置するだけに、2014年から熱心にSTEAM教育プログラムを展開してきた。2016年9月には無料オンライン学習プラットフォームを展開するカーンアカデミーと提携している。

サンフランシスコ49ersの試合の様子(写真:NFL)
サンフランシスコ49ersの試合の様子(写真:NFL)
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 カーンアカデミーとの提携では、オンラインで49ersに関連した事象や話題を通して学習をすることができるようになった。同アカデミーのサイト内に設けられた49ersのハブでは、49ersの選手による「ボールを投げる時にスパイラルをかけて投げることがなぜ良いのか?」といった質問にカーンアカデミーの創設者兼CEO(最高経営責任者)が答える、といった内容のビデオが掲載され、自由に閲覧できるようになっている。

 さらに49ersは2017年5月、チームが運営する財団と石油などのエネルギーを扱う米シェブロン社、大手携帯電話会社の米ベライゾン社などと組みSTEM教育とそのビジネス機会の開発に向けた提携も結んでいる。

49ersは2017年5月、チームが運営する財団と米シェブロン社、米ベライゾン社などと、STEM教育とそのビジネス機会の開発に向けた提携を発表した(図:49ersのWebページ)
49ersは2017年5月、チームが運営する財団と米シェブロン社、米ベライゾン社などと、STEM教育とそのビジネス機会の開発に向けた提携を発表した(図:49ersのWebページ)
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