GPSは、もはやトレーニングツールの一つに
ラグビーでは、以前からDLT(Direct Linear Transformation)法という手法でデータを取得していました。映像をコマ送りしながら、選手がどのように動いていったのかを分析する手法です。しかし、数年前からGPS端末を活用するようになり、以前よりも簡単に、かつ短時間で選手の移動距離などのデータを取得できるようになりました*1。
あるとき、GPS端末で計測したデータをサッカー日本代表チームの関係者に見てもらう機会がありました。その際、「GPSで得られるデータはためになるが、最もハードなシーンで実際にどのようなプレーが行われているのか、実際の映像が欲しい」ということを言われました。定量的な数字や指標は戦術やトレーニングを向上させるための着眼点を与えますが、より詳細に落とし込んでいくためには具体的な映像をプラスしなくてはならないのです。つまり、「GPS端末はもはやトレーニングに必要なツールの一つに過ぎない」と言うこともできます。
実際、欧州のサッカーでは、複数のカメラを使い、多視点から選手の移動距離などを把握する手法が普及しています。ラグビーもそれを真似すればよいではないかと思うかもしれませんが、単純に流用することはできません。なぜなら、ラグビーはラックやモールなど、選手たちが密集した状態でプレーするシーンが多い。単純にスタンドからの映像だけでは、個々の選手を認識し、その選手がどのように動いていったのかを把握しにくいのです。