Atosのほかに、組織委員会(東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会)と契約を結ぶNTTグループやNEC、富士通といった日本のITベンダーもプロジェクトに参加しています。

 そうです。東京五輪では多くのIT関係のパートナーがいます。AtosはIOCと最上位の契約である「トップ(The Olympic Partner)」契約を結んでいるので、他のIT関連のパートナーと協力し、それを統合していくことが役割となります。

 選手などを管理する「Olympic Management Service(OMS)」や、競技結果を配信する「Olympic Data Service(ODS)」など、当社が提供する主要なアプリケーションのほかにも、東京五輪では様々なアプリケーションが必要になります。これらを統合し、シームレスなユーザーエクスペリエンスを確保する責任がAtosにはあります。

 東京五輪では、これまでの大会にはない新たなサービスを提供する計画はありますか。

 大きなものは組織委員会などが発表するので、私からは言えません。

 私から話せる新しい取り組みの一つは、モバイル向けのアプリを提供することです。Atosが提供するWebサービスにアクセスし、結果をいつでも見ることができるアプリです。

 モバイルアプリは誰が使うことを想定していますか。

 関係者に限らず、誰でもいつでも、どこでも利用できます。もちろん、あなたも利用できますよ。

東京五輪が初のフルクラウド化の大会に

 もう一つ、東京五輪で新しい取り組みがあります。それはすべてのシステムをクラウドで提供する予定であるということです。

 どのようなクラウドサービスを利用するのですか。

 Atosが提供しているクラウドを利用します。

 これまでの大会では、クラウドは利用していなかったのですか。

 2012年のロンドン大会では、データセンター内にすべてのシステムがありました。データセンターはAtosと組織委員会が管理していました。2016年のリオデジャネイロ大会では、いくつかのサービスはクラウドを使っていましたが、ODSなどはデータセンターを使っていました。

 クラウドは拡張性にすぐれており、コスト効果も高く、環境に対してもクリーンであると考えています。ロンドン、リオとデータセンターを利用しているシステムはイチからシステムを構築しなければならず非常に時間も費用もかかります。

 クラウドの信頼性はますます高まっており、実際に利用できるようになってきました。クラウドを利用することで、大会ごとに構築する手間が省け、システムの再利用性が高まります。

 クラウドの信頼性や可用性が高まったと評価したから、東京大会からはクラウドを利用するということでしょうか。

 はい。リオでは、二つのデータセンターでシステムをバックアップしていました。しかし今は、すべてをクラウド上で稼働しています。高い可用性とスケーラビリティが確保できています。

 ボランティアポータルのようなサービスでも可用性やスケーラビリティは非常に重要です。多くのボランティアが応募すればレスポンスを確保するためにスケールアウトする必要があります。クラウドであればスケールアウトもスケールダウンも可能です。

 Atosは欧州の会社なので、データセンターは地理的に日本から遠い地域にあると思います。クラウドのレイテンシー(遅延)は問題ないのでしょうか。

 今は欧州にありますが、レイテンシーに問題があると分かればいつでも移動できます。それがクラウドの特性です。

 今、プロジェクトを進めるうえで困っていることは何ですか。

 人材です。

 英語が出来ることが条件ですが、日本でバイリンガルのITエンジニアを確保することが難しいですね。このインタビューを読んで、「我こそは」と思ったITエンジニアの方は是非、プロジェクトに参加してください。