二つめに重要なのは、リスクを特定することです。これは非常に大切です。リスクを特定できれば、軽減策を立案できます。より早い段階でリスクを特定すれば、軽減策を講じる時間がそれだけ長くなり、良い結果を得られやすくなるのです。反対に最も嫌なことは、プロジェクトの終盤でリスクが見つかることです。

 そして最後に重要になるのは、強固なガバナンスです。これはAtosにとって重要なだけではなく、組織委員会であったり、プロジェクトに参加するすべてのパートナーにとって重要です。プロジェクトの関係者が、責任を持ってシステムを提供することが、プロジェクトの成功要因となります。

技術の進化を見据え、変更管理を重視

 もう一つ、プロジェクトで重要になると考えているのが変更管理です。2020年までの間に、何らかの理由で決定が変更することはあるでしょう。変更管理のプロセスを確立し、あらゆる種類の変更を早期に特定し、変更管理のプロセスが確実に行われるようにすることがプロジェクトマネジメントで欠かせません。

 変更には技術の進化も含まれていますか。

 はい。我々は常に人々が新しい技術をどのように使うかを予測しながらプロジェクトを進めようとしています。新しい技術がオリンピックのためにどのように利用されるかのビジョンを持ち、戦略を持つことが重要になります。もし技術の進化が想定と異なっていれば、すぐに修正することも重要になります。

 技術の進化を読むのは難しいですか。

 そうですね。技術の進化は非常に早いです。

 我々はクライアント、メディア、そしてチケットを購入した観客からの期待に対し、一歩先行するようなサービスを提供できるように挑戦しています。クライアントや報道機関、観客はどのような大会になるのか期待しています。この期待に対し、提供するサービスが適切なレベルにあるかどうかを確認する必要があります。

 技術の進化は早い一方で、一つのオリンピックの大会にかけられる時間は限られており、これは非常に難しい課題です。

 新たに提案して実装するシステムも含め、オリンピックで利用するすべてのシステムが確実に動く必要があります。そこで我々はテストを重視しています。

 テストはどのような体制で進めているのですか。

 我々はテストを専門に実施する「統合テストラボ」を設置し、ここでテストを行っています。これまで各オリンピックの開催都市に設置していましたが、現在は仮想化を積極的に採用することで、欧州に統合テストラボを置いています。そこで20万時間のテストを行っています。

システムの不具合は「絶対に受け入れられない」

 特に結果を管理するシステムは、確実に動作することを保証しなければ競技が始まりません。また競技中に不具合を生じることは許されません。競技前であれ、競技中であれ、システムに障害が発生することは絶対に受け入れられないのです。だからこそ、テストが重要になります。何度も何度もやり直し、バグは確実にオリンピック前に修正します。

 Atosがこれまでオリンピックのプロジェクトを成功している要因は、システム全体がシームレスに稼働することを確実に実行しているからだと考えています。これは非常に重要なことなのです。

 オリンピックはスポーツの大会です。なので裏側にある技術は「見えてはいけない」と考えています。

 どういう状態が理想なのでしょうか。

 システムが問題なく稼働すれば、オリンピックで裏側にあるテクノロジーの問題が話題になることはありません。なのでAtosがオリンピックにおいて成功するということは、報道などでテクノロジー的な問題について何も取り上げられないということです。

 現在、プロジェクトの規模はどれくらいなのでしょうか。

 これまでの大会では開催都市に拠点を設置し、開発作業を行ってきました。今では作業の集中化を進めているため、欧州に開発本部を置いています。東京にも拠点はありますが現在は11人しかいません。グローバル全体では3500人がプロジェクトに参加しています。プロジェクトが進むにつれ、参画する人も増えていきます。