先ほどシステムは「設計段階にある」との話しでしたが、2020年の東京五輪向けに特別な機能が必要になるのでしょうか。

 ODSやInfoなどのアプリケーションは、過去の大会でも利用し、実績があるものです。これを東京大会に向け改善していきます。今はデジタル化に注力しています。

 東京五輪で必要な新しい要件の非常に簡単な例が、日本語への対応です。ボランティアポータルで「カタカナを入力できるようにする」といった要件へ対応することが、もっとも分かりやすい例です。

 ほかの取り組みとしては、ボランティアポータルのモバイルアプリケーションへの対応を進めています。モバイルデバイス上でボランティアの管理・登録が出来るようにしているのです。ユーザーエクスペリエンスの向上を踏まえて、より効率的に管理できる仕組みを作っています。

2019年のテスト大会で全システムをテスト

 2020年の東京五輪に向け、システム構築プロジェクトのピークはいつ頃になるのでしょうか。

 2019年までに必ず運用フェーズに入らなければなりません。五輪に向けたテスト大会が2019年に開催されるからです。五輪に向けたテスト大会では、システムでだけではなく、ポリシーやプロセス、そして人などもテストする必要があります。

 オリンピックが開催される2020年に入ると5月中旬から大会終了までの間に、24時間体制で全てのオリンピック関連システムをサポートする体制に入ります。そしてプロジェクトのピークは大会期間中になります。

スポンサー契約が五輪のプロジェクト体制を決める

 オリンピック向けに製品やサービスを供給する場合、原則として、IOC(国際オリンピック委員会)や、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(組織委員会)とスポンサー契約を結ぶ必要がある。これはシステム構築も例外ではない。

 スポンサー契約を結ぶと、契約の対象となるカテゴリーで製品やサービスを東京五輪に対して提供できるほか、マーケテイング活動に東京五輪のマークや呼称などが利用できるようになる。

 オリンピックのカテゴリーは1カテゴリー1社が原則。Atosが以前からIOCと最優先となる「トップ(The Olympic Partner)契約」として「IT」カテゴリーで契約を結んでいるため、東京五輪に参加するほかのITベンダーは「IT」以外のカテゴリーで契約を結ぶことになる。

 そこで日本のITベンダーは「IT」よりも細分化したカテゴリーで契約を結んでいる。NTTグループは「通信サービス」、NECは「パブリックセーフティ先進製品」と「ネットワーク製品」、そして富士通は「データセンター」だ。トップの契約は組織委員会との契約よりも優先されるため、アトスが東京五輪のプロジェクトマネージャーとなり、NTTやNEC、富士通などの日本のITベンダーはその下でプロジェクトに参加することになる。

 Atosの以前に、「IT」カテゴリーでトップ契約を結んでいたのは米IBMだ。1998年に長野で開催された冬季五輪の際には、IBMがプロジェクトを率い、NTTなどが、2020年東京五輪と同様にIBMの傘下に入り通信サービスなどを提供した。

 現在、日本企業でトップ契約を結んでいるのは、トヨタ自動車、パナソニック、ブリヂストンの3社。契約カテゴリーは、トヨタ自動車が「モビリティ」、パナソニックが「音響・映像機器、AV記録メディアなど」、ブリヂストンが「タイヤ、免震ゴム、自転車(電動・モーターアシスト除く)」。パナソニックは2020年の東京大会についてはさらに「パソコン」でのカテゴリー契約を結んでいる。

 IT分野でトップ契約を結んでいるのはAtosのほかに、韓国サムスン電子、中国アリババの2社。サムスンは「無線通信機器」、アリババは「クラウド、EC(電子商取引)」のカテゴリーで契約を結んでいる。