国際サッカー連盟(FIFA)は2018年5月16日、サッカーW杯(ワールドカップ)ロシア大会(6月14~7月15日)で、トラッキングシステムが取得したプレーのデータを各チームがリアルタイムに活用する仕組みの導入を発表した。サッカーのルールの制定など重要事項を決定する機関である国際サッカー評議会(IFAB)が、小型の携帯端末をベンチに持ち込むことを認めたことを受けての決定である。
昨今、多くのスポーツでトラッキングシステムの導入が進んでいるが、リアルタイムでのデータ活用を認めているリーグや大会は数少ない。先進事例の一つは、女子テニス協会(WTA)が運営する女子プロテニスのツアー大会である。
2台のタブレットを提供
W杯ロシア大会では、各チームにFIFAが公認したタブレット端末が2台提供される。1台はスタンドから試合を観察するチームのアナリスト向けに、もう1台はベンチにいるコーチングスタッフ向けである。
トラッキングシステムは2台のカメラを使用するもので、選手とボールに関する位置データを取得する。統計処理したデータとライブの映像はアナリスト向けに設置されたサーバーに転送され、タブレットのアプリでそれらを参照できる。
アナリストは選手のプレーデータを解析して、試合の状況を評価。アナリスト向けの専用アプリを使って戦術について検討すべきポイントを絞り込める。そしてタブレット端末でポイントを書き込んだ静止画を、チームのテクニカルスタッフに送り、アシスタントコーチと無線で話し合える。アシスタントコーチはチャットツールを使ってメッセージを返答するなど、アナリストと戦術などについて試合中に議論ができる。
こうしたシステムの導入によって、ハーフタイムにおける後半の戦い方の指示をデータに基づいたものにすることが可能になる。さらに試合の分析結果は、FIFAが試合後に、各チームに提供するという。