MLBで市場開拓に挑戦

 NTTデータは現在、VRトレーニングシステムの顧客開拓に力を入れている。主なターゲットはMLBだ。MLBは球団数が30もあり、日本のプロ野球の12と比べると市場規模が大きい上、データ活用も進んでいる。「MLBでも2017年からVRトレーニングシステムの導入が本格化する。そこに入り込みたい」(馬庭氏)。

 もちろん、そこにはEON Sports社などの競合も存在する。NTTデータとEON Sports社のシステムには一長一短があるが、NTTデータは「コスト」と「可搬性」の2点を優位性として掲げる。

 NTTデータのシステムは、VR用HMDと画像処理能力が高いノートパソコン、専用の外部カメラなどで構成される簡易なもので、ハードのコストは数十万円レベルと安い。遠征先に持ち込んでトレーニングするのも容易だ。担当者が次に対戦する投手のVRコンテンツを作成する運用体制もできている。

 一方、iCubeは上記のように選手の周囲に映像を投影する大がかりなシステムなので、遠征先に持ち込むのは容易でない。EON Sports社は持ち運びを想定した「モバイル版」も用意しているが、別途購入が必要になる。

長打率と得点力が向上

 「前年よりも(チーム1試合当たりの)長打率と得点が高まった」

 iCubeを昨年導入したタンパベイ・レイズは、詳細なデータを公表していないものの、上記のコメントを発表している。これが本当にVRトレーニングシステムの効果だとすれば、プロ野球球団での採用は急速に進むかもしれない。

 実は、VRトレーニングシステムのビジネス面の弱点は、効果をデータで示しにくい点にある。どんなスポーツであれ、イメージトレーニングが「マイナス」にはならないことは感覚的には分かるが、「見たからといって成績が良くなるとは限らないところが、このシステムの評価の難しい点」(馬庭氏)。

 今後、プロ野球団で導入が進み、効果に対する検証データが蓄積されれば、「実戦に効く有効な使い方」なども見えてくる可能性がある。