久木留 選手の指導においては、コーチが直接話してもうまくいかないことがあります。そんな時、コーチが自分のことをインプットしたAIがあるといいですね。例えば、AIに対して「今、自分が選手に教えていいか」と聞くと「ちょっと待て」という答えが返ってくる。その場合は、選手がシャワールームにいるときに、目の前のディスプレーに映像が出てAIが選手に“気づき”を与える。そんな使い方があるかも知れませんね。

田中 それ、いいですね。自分と違う思考グセのAIを複数作っておけば、多様な考え方に基づいて選手を育成できそうです。「叱咤激励コーチ」「冷静沈着コーチ」とかを、シチュエーションで使い分けたり・・・。

「スポーツ×AI」をテーマに対談した3氏。左から久木留氏、田中氏、神武氏
「スポーツ×AI」をテーマに対談した3氏。左から久木留氏、田中氏、神武氏

久木留  朝、選手がトレーニングセンターに到着した時、「いつもより早く来ているから今日は強度を上げて」とか、「遅く来て疲れていそうだから軽めで」など、選手のコンディションを判断してAIが練習メニューを調整してくれるといいですね。

神武 今、私が関係している大学のスポーツチームでは、食事、睡眠、フィジカルについてデータを記録・分析し、それによって練習メニューを変えています。このスポーツチームの場合、その大学にはほとんどスポーツ推薦枠がないので、いかにケガをさせないかも重要な点だからです。

 現在はこうした選手管理をスペシャリストがやっていますが、その知見の継承は課題になっています。これをAIに落とし込んでより汎用化できれば、例えば小学生の選手の指導などにも応用できるかも知れず、そのような取り組みも進めています。

(次回に続く)