2016年3月11日~12日の2日間、米国ボストンにある大型コンベンションセンターに、約4000名もの人々が集結した。年に一度のスポーツアナリティクス(解析)をテーマにしたカンファレンス「MIT Sloan Sports Analytics Conference」(MIT SSAC)に参加するためだ。今年で10回目を迎えたMIT SSACには、「Trade Show」と呼ばれるコーナーが設置され、数多くのベンチャー企業が自社サービスをアピールした。MIT SSACに参加したユーフォリアの橋口寛氏に、注目のスポーツ系ベンチャー企業や、今回参加した大手企業の取り組みについて紹介してもらう。

 前回報告したように、米国で2015年にベンチャーキャピタル(VC)がスポーツ系ベンチャー企業に投資した金額は10億ドル (約1100億円)を超えた。これは2014年における日本国内のベンチャー企業への総投資額(1154億円、ジャパン・ベンチャー・リサーチ調べ)にほぼ等しい規模である。 

MIT SSACでのビッグデータ関連のパネル・ディスカッションの様子。Intel社が協賛
MIT SSACでのビッグデータ関連のパネル・ディスカッションの様子。Intel社が協賛
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 米国では、日本で想像もつかないような数多くのベンチャー企業がスポーツ産業での成功を夢見て参入しており、MIT SSAC(マサチューセッツ工科大学のビジネススクールが主催)でその一端を見ることができた。なかには非常に興味深い取り組みをしている企業もあったので、いくつか紹介しよう。

KINEXON

 KINEXON社は、ドイツで創業したスタートアップ企業で最近米国に進出した。センチメートル単位という極めて高精度で3次元センシングができるデバイスや屋内向けの位置情報技術などを開発している。バスケットボールなど室内スポーツに強み持つという。
KINEXON社のホームページ(http://kinexon.com/)
KINEXON社のホームページ(http://kinexon.com/)
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humon

 humon社は筋肉中の酸素量を測定するウエアラブルデバイスを開発している。これまでにも血液中の酸素飽和度(SPO2)を測定する機器は存在したが、プレー中のデータをリアルタイムで測定できるものはなかった。MITのアクセラレーションプログラムの卒業生が設立した。
humon社のホームページ(http://humon.io/)
humon社のホームページ(http://humon.io/)
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VERT

 VERT社は、プレーヤーの腰に着けてジャンプの高さ・回数・重力加速度などを測定するデバイスを開発している。バレーボールやバスケットボールを得意領域とするが、ユニークなのは選手のパフォーマンスの測定のみでなく、スポーツ障害予防、メディアへのエンタテインメント系コンテンツの提供、プレーヤーのモチベーション向上までをスコープとしている、点だ。
VERT社のホームページ(https://www.myvert.com/)
VERT社のホームページ(https://www.myvert.com/)
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Catapult

 Catapult社は、もはやベンチャーと呼ぶのは失礼なほどスポーツ分野において大きな存在。サッカーやラグビーなどを中心として広く使われているGPS(全地球測位システム)のウエアラブルデバイスを提供している。オーストラリアスポーツ研究所(AIS)の技術をベースとして、2006年にオーストラリアで創業した。
Catapult社のホームページ(http://www.catapultsports.com)
Catapult社のホームページ(http://www.catapultsports.com)
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Halo Neuroscience

 Halo Neuroscience社は、米スタンフォード大学メディカルスクールで神経科学を研究していた創業者が2013年に創業したベンチャー企業だ。大ぶりのヘッドセットを頭につけて神経刺激を与えると、神経の反応が改善されるという。てんかん患者を対象とした神経刺激治療器向けに開発された技術を転用した。既にスキージャンプの米国代表チームが使用しており、ジャンプ時の力は31%向上し、ジャンプ時のエントロピーは25%減少するという。
Halo Neuroscience社のホームページ(https://www.haloneuro.com/)
Halo Neuroscience社のホームページ(https://www.haloneuro.com/)
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