なぜ、南アフリカ代表に勝てたのか。私は準備の差にあると思う。日本代表は常に「Beat the Boks」(南アフリカ代表を負かそう、Boksは同チームの愛称Springboksの略)を合言葉に掲げていたのに対し、南アフリカ代表の目標は日本戦のはるか先の優勝にあった。
実際、対戦相手のすべての選手を分析していた日本代表に対し、日本を脅威に感じていたのは日本でプレーしている南アフリカ選手のみ。こうした状況の中で、双方に準備の差が生まれた。
試合の3年前から情報収集開始
2012年4月1日、エディー・ジョーンズ氏(現イングランド代表ヘッドコーチ)をヘッドコーチとする「エディージャパン」が誕生した。エディーが掲げた最大の目標は、それまで最高13位だった世界ランキングを10位以内に引き上げることだった。
その目標は2014年6月に達成し、次の目標としてW杯でのベスト8が設定された。エディーはこれらを実現するために、ラグビーのスタイルとして日本独自の「ジャパンウェイ(Japan Way)」を掲げた。我々スタッフに対しては、「世界で最も準備されたチーム」を目指すことが強く指示された。フィジカルでもスピードでも一足飛びには世界一になれない。ならば、準備で世界一を目指そうと…。
エディージャパンの組織は、ヘッドコーチであるエディーとアシスタントコーチ4人の体制で、それぞれのコーチに役割と責任が与えられていた。例えば、エディーならアタック、スティーブ・ボーズウィック氏(元イングランド代表主将)はラインアウトとキックオフといった具合だ。各コーチは試合に向けて対戦相手を分析し、対策を考えてトレーニングメニューやミーティングのプランを作る。アナリストである私は、コーチ陣の前段階の準備をするのが仕事で、準備内容は各コーチごとに異なる。