2020年の東京五輪・パラリンピックで、トヨタ自動車とともに最高位スポンサー「ワールドワイドパートナー」に名を連ねるパナソニック。スポーツビジネスの開拓に熱心な同社が、プライベート展示会「Wonder Japan Solutions」(2017年2月14~17日、東京)で、最新のソリューションを複数披露した。

 国内でビジネスの拡大が期待されているスタジアム・アリーナに向けたソリューションとして紹介したのが、モバイル向けの「マルチ動画配信システム」だ。スタジアムなどの限られた領域内で、Wi-Fiを利用して複数の動画を同時に配信する。

モバイル向けの「マルチ動画配信システム」はスマホやタブレット端末に、さまざまな角度からの動画を同時に配信する
モバイル向けの「マルチ動画配信システム」はスマホやタブレット端末に、さまざまな角度からの動画を同時に配信する
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 スタジアム・アリーナなどスポーツの競技会場で、さまざまな角度から撮影したライブ映像やプレーの解説動画を、会場内の観客のスマートフォン(スマホ)やタブレット端末に配信する。運用コストは2万人規模のスタジアムで、1試合につき数百万円。ゴルフや自動車レースといった広範囲で行われるスポーツや、陸上や体操など複数の競技が同時進行するスポーツでの活用を見込む。

 スマホ用のアプリに動画を配信する場合、必要な帯域は1チャネル当たり1.5Mビット/秒。今回のシステムは、最大で8チャネルを配信でき、その場合は12Mビット/秒の帯域が必要となる。通信の負荷を軽減するため、配信にはマルチキャスト方式を用いる。加えて、スマホのアプリが配信データを保存する仕組みを持つことで、アプリ側がサーバーにアクセスする回数を減らしている。

 サーバーやWi-Fi設備を持たない施設や会場での利用を想定し、サーバーを設置するラックには、持ち運びをしやすいトランク型(容積が60リットル程度の中型スーツケースの大きさ)を用意した。仮設のアンテナなどと組み合わせてサービスを提供できる。

マルチ動画配信システムで利用するサーバーラック。トランク型で持ち運びやすい
マルチ動画配信システムで利用するサーバーラック。トランク型で持ち運びやすい
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 同システムを開発したのは、モバイル端末向けの動画配信を手掛けるフランスのベンチャー企業VOGO SAS社。パナソニックは、同社の子会社を通じて、同システムの日本市場での独占販売契約を締結した。「VOGOはこの技術に関して7件の重要な特許を持っている。パナソニックで同様のシステムを開発した場合、特許に抵触してしまうため、独占販売契約を結んだ」(パナソニック)。パナソニックは同システムの販売を通じて、自社で開発したタブレットやWi-Fi機器などの売り込みを図る。

 同社は、2016年12月に秩父宮ラグビー場で開催された「ジャパンラグビートップリーグ」の試合で、同システムを用いた実証実験を実施した。2017年度前半の商用化を目指すとしている。

選手の緊張度合いを非接触で測定

 上記のソリューションはスポーツ競技場向けのものだが、テレビのスポーツ中継でもICT(情報通信技術)を使ってこれまでにない情報を視聴者に伝えれば、視聴率が向上し、ビジネスにプラスになるとの指摘も多い。