スポーツの世界で、選手やチームのデータを細かく記録し、試合をもっと深く楽しみたいファンに提供する動きが活発になっている。中でも日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)は、早くからデータ分析が専門のデータスタジアムと組み、ピッチを走る選手やボールの動きを記録・公開してきた。最近は一歩進めて、データ活用のアイデアをファンの知恵を借りて実現する試みにも乗り出した。Jリーグはデータを使って何を起こそうとしているのかを追った。

サッカーにもオープンイノベーションを

写真●慶應義塾大学でJリーグ主催の「第1回Jリーグトラッキングデータコンテスト」が開かれた
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写真●慶應義塾大学でJリーグ主催の「第1回Jリーグトラッキングデータコンテスト」が開かれた

 「2050年までに、ぜひもう一度日本でワールドカップ(W杯)を開きたい。そのためにはいかにデジタルをうまく活用して、サッカー人気をもり立てられるかにかかっている」。日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)の中西大介常務理事は、「第1回Jリーグトラッキングデータコンテスト」の参加者たちにこう訴えかけた。

 東京・三田。慶応義塾大学のキャンパスは休日にもかかわらず、若者たちが詰めかけていた。Jリーグトラッキングデータコンテストと呼ばれるプレゼン対決イベントに参加するためだ。試合に関してJリーグが持つ公式データを一部公開し、それを活用した大胆なアイデアを一般消費者から募るものだ。今回が初めての試みとなる。

 狙いはオープンイノベーションによって日本のサッカーを強くし、人気を高めるきっかけを作ることにある。「デジタルの力で高度なプレーができる選手を育成したり、ファンが試合を楽しみやすい環境を整えたりする取り組みは世界的な潮流。日本も遅れてはならないと、サッカー界以外の知恵も借りることにした」(中西常務理事)。

写真●優勝したのは米村俊亮さんが開発した「サポラン」と呼ばれるスマートフォン向けアプリ
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写真●優勝したのは米村俊亮さんが開発した「サポラン」と呼ばれるスマートフォン向けアプリ

 呼びかけに応じてエントリーされた作品は全部で71。ウェブサイト経由で申し込むと2015年の第1ステージ全試合に関するチームや選手のさまざまなデータを入手できる。それらを活用してデータ分析もしくはコンテンツ制作した結果を募った。

 データは試合ごとのトラッキングデータ(走行距離やスプリント回数、ゴール数や勝率など)のほか、チーム別のスタッツデータ(ボールがパスされた流れなど)、観客動員数、選手の身長や生年月日などのプロフィールデータなどだ。