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スポーツIT革命の衝撃

NTTが世界最強のITスタジアムで得た自信

巨大通信企業は、なぜスポーツビジネスを志したか(前編)

2017/02/14 00:00

上野 直彦

 2017年2月19日から8日間にわたって、札幌市と帯広市で「2017 冬季アジア札幌大会」が開催される。
 冬季アジア大会は、アジアオリンピック評議会(OCA)がアジア地域における冬季スポーツの発展を図ることを目的として開催する、いわば2018年に韓国・平昌で開催される冬季オリンピックの前哨戦でもある。日本と東アジアで大型国際スポーツイベントの開催が続く「ゴールデンイヤーズ」を目前にし、「スポーツとICT(情報通信技術)」で新ビジネスを構築し始めたNTTグループは、札幌市と「さっぽろまちづくりパートナー協定」を締結しており、グループ企業のNTT東日本とNTTドコモが冬季アジア札幌大会をゴールドパートナーとしてサポートすることになった。
 スマートスタジアムや動画配信におけるサッカーJリーグとの協業をはじめ、NTTグループはスポーツと情報通信サービスの融合を加速しようとしている。それによって、何を創出しようとしているのだろうか。NTTのスポーツ関連プロジェクトのカギを握る「新ビジネス推進部」で、多岐にわたるビジネスを展開中の中心メンバーに聞いた。前編は、NTTグループにおけるスポーツビジネスの取り組みについてお届けする。
(聞き手は、上野直彦=スポーツジャーナリスト)
左からNTT 新ビジネス推進室の地域創生担当 担当部長の金子憲史氏、同担当 統括部長の大西佐知子氏、2020レガシー担当 担当部長の小笠原賀子氏

―― NTTが新ビジネス推進室を立ち上げた経緯と現状、スポーツビジネスへの取り組みについて教えてください。

金子 NTTのメイン事業は長く「電話」でしたが、この数年で音声通信のビジネスはかなり縮小しています。それに代わる新しい事業の柱をNTTグループ横断でつくっていく。これを目指して新ビジネス推進室を立ち上げました。

大西 電話、インターネットに続くビジネスの柱として期待している分野が、地域創成やスポーツ関連の分野です。

小笠原 2020年の東京オリンピック・パラリンピックの誘致が決まった後、2014年7月にNTTグループとしての東京オリンピック・パラリンピックに向けた方針が決まりました。それと前後して、西武ドームでアジア初で高密度Wi-Fiをスタジアムに入れ、スマートフォンなどでマルチアングルで映像を見られるシステムを導入しました。

―― 高密度Wi-Fiですか?

大西 無線LANのアクセスポイントを通常よりも高密度に配置する技術です。高密度Wi-Fiでは、1台のアクセスポイントを100〜300人ほどで共有するような設計が一般的です。共有するユーザー数を少なくすることで、スタジアムのように混雑する場所でも快適に通信ネットワークを利用できるようになります。

―― 反響はどうでしたか?

大西 2014年夏の時点では、まだ日本で高密度Wi-Fiという言葉自体があまり知れ渡っていませんでした。ちょうどインバウンド需要で訪日観光客が増え、日本でもWi-Fiアクセスポイントを増やそうという話が出てきて、少し時代の先を行った印象だったかもしれません(笑)。

 西武ドームの後、2015年6月にJリーグで初めての試みとして、川崎フロンターレのホームスタジアム(等々力陸上競技場)にもWi-Fiを導入しました。提供したのは、サポーター向けの映像配信や、席にいながらスマホで食べ物を注文できるサービスなどです。

 スタジアム向けのWi-Fi導入を本格展開するきっかけは、スマートスタジアムとして有名な米国のリーバイス・スタジアムの通信環境構築にNTTグループで協力したことでした。2014年秋からNTTブロードバンドプラットフォーム(NTTBP)の社員3人が現地に常駐し、米アルバ・ネットワークス社と一緒にリーバイス・スタジアムのWi-Fi環境の構築に携わったんです。

 そこで得たノウハウを日本でも、ということで国内のスタジアムやスポーツ協会に提案したところ、Jリーグに一番良い反応をいただきました。実際にフロンターレで導入したところ、そのシーズンの観客動員数で前シーズン比の増加率がリーグで1位になりました。それもあって、サポーター向けのWi-Fiサービスは有効ということを理解していただけました。

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