―― Jリーグは今年から英パフォームグループと放映権契約を結び、「DAZN(ダ・ゾーン)」で試合映像を配信しています。パフォーム日本法人のジェームズ・ラシュトンCEOは「スタジアムのWi-Fi環境ではDAZNを無料視聴できるようにし、そこで気に入ってもらって加入につなげるような取り組みも行っていきたい」と話しています。NTTグループは、パフォーム、Jリーグと一緒にスマートスタジアム事業を進めていくと発表していますが、具体的にはどのような内容になるのでしょうか。
小笠原 スタジアムではどういうサービス設計が必要なのかを話し合いながら進めています。映像配信の技術面では、大きな問題はありません。課題は、ユーザーがどういうタイミングで、どういう形で見るとスタジアム内の新しい視聴体験として楽しいサービスになるかだと思います。
世界で蓄積したノウハウを国内に還元
―― 他の競技では、どのようなことに取り組んでいますか。
大西 国外では、自転車レースの「ツール・ド・フランス」で映像上に選手が走行速度や、走っている場所の情報を出すシステムを提供したり、NTTデータが自動車レースの「インディ500」でレーサーのバイタル情報を計測するシステムを提供したりするなど、様々な競技に技術提供しています。インディ500ではレーサーに心拍数を測ることができる「hitoe」という機能素材のウエアを着てもらい、バイタル情報を測りました。
日本のスポーツ市場は現状、欧米に比べるとまだ大きくありません。でも、人口を考えると本来はもっと大きな市場になってもおかしくないと思うんです。これまで海外で磨いてきたスポーツにおけるIT活用のノウハウを、日本でもファン層を広げる取り組みにつなげたいと考えています。
小笠原 2016年2月に苗場スキー場(新潟県)で開催されたアルペンスキーのワールドカップでは、リッチな映像体験してもらうVIPルームや、大会アプリを提供しました。
金子 大会では、アプリでアンケートに回答すると、温泉施設のクーポンがもらえるというキャンペーンを実施しました。200人限定で提供したのですが、キャンペーン開始後2時間で限定数に達したんです。大会運営側のアンケートでは、大会の改善ポイントがよく分かったと好評でした。スキーのような屋外競技では、紙でアンケートを実施しにくいので。会場近隣の人々と一緒に大会をつくっていくことが重視されていたので、アプリは大会組織委員会からも感謝されました。
大西 これまでスポーツビジネスではICT活用の位置付けが低かったのですが、様々な取り組みを通じてスポーツビジネスの拡大につながるということが見えてきました。スタジアムのようなリアルの場が盛り上がると、もう一度、観戦に行きたくなりますよね。その気持ちが、スポーツをやりたくなったり、テレビで観戦したくなったりという行動につながります。いかにリアルの場をICTで盛り上げるか。それがとても重要になってきています。
(次回に続く)