2019年のラグビーワールドカップ、2020年の東京オリンピック・パラリンピック。国際的なスポーツ・ビッグイベントの日本開催を控え、スポーツの視聴体験の一つとして期待されているのが「パブリックビューイング」や「ライブビューイング」である。

   Bリーグは2018年1月14日、ICT(情報通信技術)サービスパートナーとして契約している富士通の協力の下、「次世代型ライブビューイング B.LIVE in TOKYO」を東京・恵比寿のガーデンプレイスで開催した。これは同日、熊本県立総合体育館で開催されたBリーグ・オールスター戦を恵比寿会場で同時中継するもの。先端のICTを活用することで、従来のパブリックビューイングとは一線を画すものとなった。

2018年1月14日に開催された「次世代型ライブビューイング B.LIVE in TOKYO」。ICTは富士通がサポートした
2018年1月14日に開催された「次世代型ライブビューイング B.LIVE in TOKYO」。ICTは富士通がサポートした
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52個のマイクで集音

 今回のB.LIVE in TOKYOは、さまざまなテクノロジーの結集によって実現した。同イベントには大きく5つの特徴がある。

 第1に、サウンドシステムによる“コートにいるかのような臨場感”。熊本会場ではコートサイドや天井から観客の声援を20個のマイク、つまり20チャンネル(ch)で集音。それを恵比寿会場では20チャンネルのスピーカーで再現することで、観客は“動きのある音”を体験できる。

熊本会場における集音体制。黄色の星は32個の床下マイク。会場全体で52個のマイクが仕掛けられている(図:富士通)
熊本会場における集音体制。黄色の星は32個の床下マイク。会場全体で52個のマイクが仕掛けられている(図:富士通)
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 また、床下からは32個のマイクでバスケット特有のドリブルの音や、バッシュ(バスケットシューズ)が床をこする音、選手が走ってくる音などを集音、恵比寿会場の8チャンネルのスピーカーで再現した。ファンの歓声など不要な音声は、除去・調整される。

地下のコート下や天井にマイクが設置されている(図:富士通)
地下のコート下や天井にマイクが設置されている(図:富士通)
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 第2の特徴は、会場の2カ所に設置された「体験ゾーン」だ。体験ゾーンに立つと、試合をさも近くで見ているかのような“振動”を味わえる。攻守の切り変わりに応じて、選手が近づいてくる・遠ざかっていく、といった様子をリアルに表現した。

 第3の特徴は、4K映像と音声の高速配信。B.LIVE in TOKYOでは熊本・東京間で声の掛け合いなどを、試合開始前のオープニング演出時、ハーフタイム、試合終了後のエンディング演出時に行った。掛け合いを観客にスムーズに見てもらうためには、スピード感が重要となる。それをわずか0.3秒という速さで実現させ、双方の会場の盛り上がりをリアルタイムに共有した。

 一方、試合中の映像は品質を優先させるため、恵比寿会場での放映は意図的に約2秒遅らせるなど、シーンに応じてスピードを調整した。

ボクシングやプロレスに転用可能

 第4の特徴は、エフェクト効果による映像表現だ。例えば、ダンクやスリーポイントシュートが決まると、スクリーンにはタイトルエフェクトが現れる。また、プレーヤーの輪郭を自動で認識し、リアルタイムでエフェクトとして表示させる技術も導入された。

プレーに応じて現れるタイトルエフェクト。550インチの大画面に映し出される様子は圧巻
プレーに応じて現れるタイトルエフェクト。550インチの大画面に映し出される様子は圧巻
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