目指すは「コーチングの標準化」

ソニー 新規事業プラットフォーム SE事業室の田島精一郎氏
ソニー 新規事業プラットフォーム SE事業室の田島精一郎氏
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 ソニーはこれまで、スマートテニスセンサーを通じて約1億以上のショットデータを蓄積。同社のWebサイトでは、日本、北米、欧州など世界の地域ごとのユーザーの「ボールのスピン」「スイング速度」「ボール速度」などのデータ平均値を公開している。

 これはこれで興味深いものの、現時点では「可視化」の域を出ていない。上達に役立つデータではないからだ。テニスに限らずどのスポーツでも、「ボールが速い=試合に勝てる」とは限らない。ソニーの田島氏は「ユーザーが強く、速く打ったことを裏付けるデータはあるが、うまくなるためのデータはまだない」という。

 ルネサンスでスマートテニスレッスンが始まれば、それを次のステップに押し上げられる。ソニーはレッスンで蓄積した大量のデータを、人工知能(AI)なども活用して解析する。田島氏は「意味付けされた情報が増えるのが大きい。映像やショットデータに加え、コーチの声などをタグ情報として取得できるので、『いいボール』や『いいゲーム』であることが分かるようになる。それをレッスンなどに生かすことが可能になる」という。

 さらに「例えば、どんなスキルを持つ生徒がどんな指導でどう上達したかをマスで分析できれば、優秀なコーチのスキルを可視化して『コーチングの標準化』ができる可能性もある。それはスクールにとっても大きな意味があると思う」(田島氏)。

 専属コーチがいない一般プレーヤーが欲しいのは、上達に関する適切なアドバイス。プレーヤーのスキルや運動能力にあった具体的なアドバイスをAIが提示してくれる――。そんな未来の入り口に立ったのかもしれない。