本連載の特長 ―データ分析に悩む方へ―

 品質に関する顧客の要求水準やリコールのリスクが年々高まっています。このような市場動向と、IoTやAIなどの技術が急速に進展している技術動向が重なり、品質向上のためにビッグデータを活用しようとする動きが活発になってきています。しかしながら、品質向上のためにどのようなデータを収集し、どのような分析をすればよいか分からないという悩みを抱える企業が少なくありません。なぜ、このような状況になってしまっているのでしょうか。

 理由の1つに品質のつくりこみに関する知見が偏っていることが挙げられます。具体的には2つの方向で知見が偏りがちです。1つは、個々の品質問題に対する知見は豊富ですが、複数の品質問題に対する知見が不足しがちです。もう1つは、製品のメカニズムに関する知見は豊富ですが、製品を造る人や組織のメカニズムに関する知見が不足しがちです。それぞれの具体例を挙げます。

 まず「個々の品質問題に対する知見は豊富だが、複数の品質問題に対する知見が不足しがち」についてです。業界を問わず以下のような状況が見られるメーカーは少なくありません。

●品質問題が発生した際、問題解決のために使用する帳票は、個々の品質問題について完結する形になっている

●個々の品質問題を集約し、一覧化した帳票はない

●個々の品質問題の対処は行っているが、複数の品質問題を分析して、複数あるデザインレビューのうちどのタイミングのデザインレビューが弱いのか、顧客仕様の把握、システム構成の検討、要素技術の開発、組織間の調整、外部委託などのうちどのような業務が弱いのか、強度、熱、粉塵、電磁波などのうちどのような技術が弱いのか、など組織全体の弱点を見極めて改善するような取り組みはあまり行っていない