韓国では、医師と患者をつなぐ「遠隔診療」の活用はなかなか進んでいないが、医師同士をつなぐ遠隔医療については医療法で許可されている。保健福祉部は2016年度予算案において、遠隔医療とは別に「医療脆弱地の救急患者のための遠隔協力診療ネットワーク構築」「未来医療発展段階に基づくICT基盤保健医療の中長期発展方案研究費」の予算を申請した。

 このうち「遠隔協力診療ネットワーク」は、大型医療機関が存在しない過疎地域で救急患者が発生した場合に、遠隔地の医師同士が協力して患者を診療し、救助するためのシステムである。同システムでは、地元の保健所や医院と、都市部の協力病院にいる専門医を遠隔でつなぐ。その上で、検査・診療記録や映像、音声などのデータをスマートフォンやタブレット端末などでリアルタイムに共有する。従来こうしたケースでは、専門医が電話だけを頼りに救急患者の状態を把握し、指示を出していた。

 同ネットワークを稼働することで、患者の状態をもっともよく知る地元のかかりつけ医師と、専門知識を備えた大型病院の専門医がより正確なデータを共有し、診療できるようになる。これにより、救急患者が都市部までの移送中に亡くなったり、状態が悪化したりするのを防げる。保健福祉部は同ネットワークの構築事業に過去10年以上にわたって投資を続けてきた。