連載趣旨

 日立製作所は、電力損失が非常に小さい新しいパワーモジュール「DuSH」を開発した。トランジスタにSi IGBTを、ダイオードにSiCショットキー・バリア・ダイオード(SBD)を利用した、いわゆる「ハイブリッド型」のモジュールながら、SiC MOSFETと同MOSFETのボディーダイオードを利用した「フルSiC」モジュールに迫る低い電力損失を実現したことが最大の特徴である。

 本稿では、デュアルサイドゲート構造のIGBTや同IGBTを搭載したDuSHモジュール、さらにDuSHモジュールに採用予定の新しい実装技術について、パワーデバイスの専門家・ベテラン研究者で、開発を主導した日立製作所 研究開発グループの森 睦宏氏に、3回にわたって解説してもらう。

森 睦宏(もり むつひろ)
日立製作所 研究開発グループ
森 睦宏(もり むつひろ) 博士(工学) 早稲田大学大学院 理工学研究科卒業後、1979年に日立製作所に入社し、日立研究所に所属。それ以来、パワー半導体をはじめとする省エネ制御システムの研究開発に従事している。例えば、パワー半導体では、光トリガーサイリスタ、GaAs静電誘導型パワートランジスタ、ワンチップ・インバータIC、高電圧ドライバーIC、ソフト&ファスト・リカバリ・ダイオード(SFD)、高伝導IGBT(HiGT)など。 電気学会(IEEJ)のメンバーや、IEEEのシニアメンバーでもある。