本コラムは、数々のイノベーションで広く知られる3Mグループにおいて、大久保孝俊氏が体得したイノベーション創出のためのマネジメント手法を具体的に紹介します。大久保氏は、自身で幾つものイノベーションを実現しただけでなく、マネジャーとして多くの部下のイノベーションを成功に導きました。

 今回は、「Can Utilize(使うことができる)」システム、およびそれを構成する仕掛けを説明する(図1)。同システムはイノベーションを育む企業文化を構築するCan RUBシステムの中の2番目のシステムだ。

図1 「Can RUBシステム」の2番目のシステムは「Can Utilize(使うことができる)」
図1 「Can RUBシステム」の2番目のシステムは「Can Utilize(使うことができる)」
「Can RUBシステム」において、「Can Recognize(気づくことができる)」システムで気づいたことを業務に使えるようにするシステムが、「Can Utilize(使うことができる)」である。気づいても使えなければ宝の持ち腐れになってしまう。
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 前々回から2回に渡って、Can RUBシステムの1番目として「Can Recognize」システムを紹介した。これが有効に機能し、価値ある情報に「気づくことができた」としても、その情報を使わなければ、宝の持ち腐れとなる。「気づく」だけにとどまらず、実際に「使う」につなげる仕掛けが必要だ。そのためのシステムがCan Utilizeである。

 Can Utilizeには、後述する4つの仕掛けが組み込まれている。ただし、この4つの仕掛けを使いこなすには大きな前提がある。それは、「満たされている状況では変化を好まない」という人間の本質を突き崩すことだ。これは経営者にしかできない。Can Utilizeに入る前に、前提となる、経営者による社員の意識改革について説明したい。