小さなボールの方向や強さを即時に感知し、的確にボールを打ち返す―。オムロンが開発した「卓球ロボット」。国内最大の家電関連展示会「CEATEC JAPAN 2017(テクノロジーオンラインで速報中)」を始め、国内外の展示会などで展示され大きな話題を集めるこのロボットは、オムロンの世界最先端のセンシング技術を象徴する存在だ。

 センシングは今や急激に拡大するIoT(モノのインターネット)の中核を成す技術。オムロンは自らIoTの先進活用をけん引し、センシング技術の用途の幅を広げる。自社の生産現場や「オープンイノベーション」による他社との“共有”で、IoTの先端を走るべく挑戦を続ける、オムロンの最前線に迫る。

 生産設備の稼働データをミリ秒単位で取得した「製造ビッグデータ」。オムロンは売上高の40%を占めるFA事業の主力2工場でこの活用に挑む。草津工場ではヒトも検知できないムダを洗い出し、ケタ違いの生産性向上に結び付ける。綾部工場では故障の予兆保全に役立てる。

 「我々は製造業として、生産現場の改善活動を長年続けてきたという自負がある。ところが製造ビッグデータを集めて、電子基板の表面実装ラインの稼働状況を“見える”ようにしたら、無駄だらけだったことが分かった。正直ショックを受けたが、今では『改善できることはまだまだたくさんある』と感じている。おかげでこの1年、生産性の改善が劇的に進んだ」

●草津工場と綾部工場および海外2工場でのIoTの取り組み
●草津工場と綾部工場および海外2工場でのIoTの取り組み
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 2015年秋、オムロンが滋賀県草津市にある草津工場を報道陣に公開した際、現場を案内した制御機器事業を手がけるインダストリアルオートメーションビジネスカンパニー(IAB)商品事業本部草津工場製造1課の水野伸二課長は複雑な胸の内を素直に明かした。

 約1年前に“遭遇”した表面実装ラインの製造ビッグデータは、それほど大きな衝撃を現場担当者にもたらした。「製造ビッグデータは、これまでとはケタ違いの生産改善の可能性を秘めている」(水野課長)。