「ITpro」2016年7月26日公開のIoT向け無線通信「LPWA」の全貌「急拡大するLoRaWANのエコシステム、LTEとは補完関係、WiMAXにはならない」を転載した記事です(記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)。前回はこちら

ソラコムが出資したM2BコミュニケーションズやNTT西日本など、日本におけるLPWAとして、LoRaWANが注目株となってきた。世界的にもLoRaWANを使った商用サービスが始まりつつある。これらLoRaWANの技術を推進しているのが業界団体「LoRaアライアンス」(LoRa Alliance)だ。LoRaアライアンスの取り組みや目指す世界について、LoRaアライアンスのThierry Lestable副議長に聞いた(写真1)。なおインタビューは2016年2月にスペイン・バルセロナで開催された「Mobile World Congress 2016」の会場内で実施した。

(聞き手は堀越 功=日経コミュニケーション/テレコムインサイド)


写真1●LoRaアライアンスのThierry Lestable副議長
写真1●LoRaアライアンスのThierry Lestable副議長
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―LoRaアライアンスの活動状況を教えてほしい。

 LoRaアライアンスは、LoRaWANの普及を目指す業界団体として、2015年3月から本格的に活動をスタートしている。特徴はマルチベンダー、マルチソースであらゆるバリューチェーンを組み立てられるオープンモデルを指向している点だ。

 LoRaアライアンスが策定した仕様に基づいて、チップやモジュール、センサー、基地局、コアネットワーク、アプリケーションサーバーなどを、様々なベンダーが競争して開発する。これらの機器をLoRaアライアンスが認証し、相互運用性を確保する。LoRaWANを活用したい事業者は、マルチベンダー、マルチソースで機器を選択し、LPWAネットワークを実現する仕組みだ(写真2)。

写真2●Mobile World Congress 2016の会場内のLoRaアライアンスの展示ブース。LoRaWANに対応したモジュールやセンサー、基地局を多数展示していた
写真2●Mobile World Congress 2016の会場内のLoRaアライアンスの展示ブース。LoRaWANに対応したモジュールやセンサー、基地局を多数展示していた
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 現時点でLoRaアライアンスに参加する企業は、チップベンダーや基地局ベンダー、センサーメーカー、サーバーメーカーなど約230社に上る(編集部注:2016年2月末の状況。2016年7月現在、参加メンバーは約300社に拡大している)。チップベンダーとしては、LoRaを開発した米セムテックのほかに、スイスのSTマイクロエレクトロニクスや、米マイクロチップ・テクノロジーといった企業も参加している。

 LoRaアライアンスでは、ビジネス主体で新機能の追加も進めている。この動きはエコシステムがあるからこそ加速している。SIGFOXのように単一の事業者がサービスを提供するのではなく、多くのプレーヤーが参画しているからイノベーションが起こる。例えばLoRaWANの新たな仕様である1.1は、LoRaアライアンスの多くの参加者の要望に基づいて、新たにプライベートネットワークとパブリックネットワークでローミングできる仕様も盛り込む。

―LoRaWANを活用したネットワークサービスの展開状況は。

 (2016年2月末の時点で)既に12社がLoRaWANの仕組みを使ったIoTネットワークを展開、または展開することをコミットしている。さらに50社超がトライアルを実施中だ。

 現時点では欧州の展開が進んでいる。仏オレンジや仏プイグテレコム、ベルギーのプロキシマス、オランダKPNといった携帯電話事業者がLoRaWANの技術を活用し、IoT向けネットワークの展開を進めている。例えば商用サービスを開始したプロキシマスは、わずか5カ月でベルギーの人口カバー率の50%に達するエリアにサービスを展開した。