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スタジアムとアリーナが拓く未来

23年バスケW杯開催へ 沖縄市「1万人アリーナ」に託す夢

沖縄市上田副市長インタビュー(上)

2017/12/18 06:00

内田 泰

 Bリーグの中でも有数の人気を誇る、沖縄の琉球ゴールデンキングス。そのホームタウンの沖縄県沖縄市で1万人規模を収容する、米国型の多目的アリーナの建設計画が進んでいる。2020年度内の竣工を目指す。2023年には、インドネシア、フィリピンと共催する「FIBAバスケットボールワールドカップ(W杯)」の予選ラウンドが開催される予定だ。

 この「1万人アリーナ」は、政府がスポーツ産業成長の目玉として推進する「スタジアム・アリーナ改革」のモデルケースとして、成功への期待が大きい。同計画を担当している沖縄市の上田紘嗣副市長に聞いた。2回に渡ってお伝えする。(聞き手=日経テクノロジーオンライン 内田 泰)

沖縄市が計画する「1万人アリーナ」で琉球ゴールデンキングスが試合をしているイメージ(図:沖縄市)
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――最初に、沖縄市にとって1万人規模の多目的アリーナを造る意義を教えてください。

沖縄市副市長の上田紘嗣氏。2004年に総務省に入省、2016年4月から同市副市長。現在も総務省から出向中。担当は「1万人アリーナ」のほか、公共交通、街づくり全般など
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上田 琉球ゴールデンキングスのホームアリーナとして使って頂くことを考えていますが、それだけではなく、周辺地域の活性化も含めた「エリアリノベーション」の一種だと考えています。メーンコンセプトは「未来を創り、地域を活性化するアリーナ」です。

 沖縄本島の中部に位置する沖縄市は、米軍嘉手納基地の門前町として発展してきました。平成8年(1996年)には「スポーツコンベンションシティ」を宣言。県内最大規模の2つの施設(コザ運動公園、沖縄県総合運動公園)を有し、各種競技の試合やプロ野球などのスポーツ合宿を誘致してきました。実際、合宿の誘致は県内トップレベルにあります。

 これを街づくりに活かそうと努力してきましたが、これまでなかなか目に見える成果には至っていませんでした。最近では、沖縄県は観光業が好調なうえ、沖縄振興予算などもあり、経済的には絶好調という話も間きますが、中部地域にある沖縄市などにおいては、依然経済的には厳しいという声が上がるのが実状です。

 そこで現在の桑江朝千夫市長が2014年の市長選で、経済・観光振興策として1万人規模の多目的アリーナの建設などを公約として掲げ、アリーナ建設計画が進められています。ゴールデンキングスは、Bリーグの前身となるbjリーグ(BリーグはbjリーグとNBLが統合して誕生)時代の2015年4月に沖縄市をホームタウンにすることを宣言しました。現在は最大で3500人収容の沖縄市体育館をホームとしています。集客力はB1でもトップクラスで、平均で3250人強の観客が入場しています。

――1万人アリーナの建設計画はどのように進んでいるのでしょうか。

上田 平成26年度(2014年)に基本構想を策定し、平成27~28年度(2015~2016年度)に全体計画を策定しました。現在、実施設計作業を進めていますが、平成29年度(2017年度)内には完了し、平成30年度(2018年度)内に着工の予定です。 竣工および供用開始は平成32年度(2020年度)内を目指しています。

 さらに平成35年(2023年)9月に開催が予定されている「FIBAバスケットボールワールドカップ(W杯)」の開催地として、日本、インドネシア、フィリピンでの共催を提案していて、日本バスケットボール協会は沖縄市を会場候補地に決めています。開催が決定すれば、沖縄市では8カ国による予選ラウンドが開かれます。国際試合の誘致の基準はおおむね収容力8000人以上のアリーナを有することです。日本バスケットボール協会エグゼクティブアドバイザーの川淵三郎氏は、まだ全体計画が完了し、実施設計に移ろうとしている段階だったのですが、「W杯で使えないか」と市長に電話をかけてこられました(笑)。(編集部注:国際バスケットボール連盟(FIBA)は2017年12月9日、2023年W杯の開催地を日本、インドネシア、フィリピンの3カ国に決定した)

――計画している1万アリーナは、現在の沖縄市体育館とは収容力以外に何が違うのでしょうか。

上田 我々は米国型の「収益性のある施設」を目指しています。バスケットボールを中心としたスポーツイベントを臨場感があって観て楽しめる施設、そして来場者だけでなく興行者が使いやすい施設です。

 コザ運動公国内に立地する沖縄市体育館は竣工から10年も経っていない、比較的新しい施設です。競技者目線では“いい体育館”だと思います。ただ、あくまでも市民体育館として教育・福祉を目的にしており、一般の利用がメーンです。そうした意味では、我々の目指す米国型の「収益性のある施設」とは異なります。

 一方、アリーナは観客が主役です。スポーツイベントを「観て楽しむ」ための施設であると考えています。例えば、一般に体育館は内部を歩いて一周できる周遊性がありませんが、アリーナではそれが標準装備です。体育館では飲食や土足での入場も通常禁止されています。また、日本のアリーナでも場内で飲食が禁止されている施設もあると聞いています。当初、沖縄市体育館もそうでした。現在、ゴールデンキングスがホームとして利用するときは、これをすべて可能としています。

沖縄市が目指す「観る施設」のイメージ(図:沖縄市)
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