模型活用で利用者の体感を確認

今夏のリオデジャネイロ五輪でも展示された縮尺500分の1の模型(写真:日経アーキテクチュア)
今夏のリオデジャネイロ五輪でも展示された縮尺500分の1の模型(写真:日経アーキテクチュア)
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 2016年8月末に設計JVが作業を進める虎ノ門のオフィスを訪問した際、3社が一堂に集う大空間では、入り口付近の一角に大小様々な模型が並んでいた。模型は隈事務所が中心になって作成する。JSCはこれまでに新国立が建つ地域を含めた縮尺1000分の1の模型や、ブラジルのリオデジャネイロ五輪で展示した500分の1の模型などを公表している。

 実施設計では更に縮尺の大きな100分の1の模型を使って、利用者の目に触れる空間の形状を体感的に確認しながら設計を進めてきた。例えば、人工地盤と外苑西通りの地盤と歩道の関係。人工地盤に穴を開けて自然光を採り込むつくりとするため、設計では実際に模型をのぞき込んで採光する穴の大きさや位置を決めたという。

鉄骨と木材のハイブリッド構造となる屋根のアップ。設計JVは大型模型を活用して利用者の視点から体感的に細部のデザインを詰めた(写真:日経アーキテクチュア)
鉄骨と木材のハイブリッド構造となる屋根のアップ。設計JVは大型模型を活用して利用者の視点から体感的に細部のデザインを詰めた(写真:日経アーキテクチュア)
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 競技場のディティールや工事材料の種類など、施工に向けた図面をつくる過程でコストへの意識をJVで共有した。10月4日の契約では工事費が約1490億円、設計・監理費は約15億円と、整備計画の工事費の上限額である1550億円、設計・監理費などの上限額である40億円をそれぞれ下回った。大成建設の施工チームが設計に加わってコストに目を光らせたことが奏功したとみられる。

 下野総括役は「細部の変更などによる若干のコストの変動はあったが、設計の各部分で万遍なくコスト低減の努力をして上限内に収めた」と話す。